下ネタはイける口だと思っていたが、どうやら上には上があるようだ。 「でねえ?その男の○○○があんまりにも貧相なんで、お願いしてぶった切ったのよね、麻酔なしで。」 「う、わ……。え、エグイデスネ…」 「やだ、梨のは切らないわよ?女の子だし。」 「いや……そういう問題じゃないですって…。」 くいっと盃を傾けた妲己さんは、にこにこと上機嫌で私にしな垂れかかった。 酒宴が始まる前は、やれ炮烙だタイ盆だと物騒なことを太公望殿に愚痴っていたが、ようやく酔いが回ってくれたらしい。今は美味しそうにゆで卵を貪っている。 「妲己さんはゆで卵が好きなんですか?」 「そうねぇ…嫌いじゃないかも。」 「二個目食べながら言う台詞じゃないですよ。」 どんなツンデレですか、なんてため息をつきながら彼女の盃に酒を注ぐ。 寄りかかった肩口から上目遣いでありがと、なんて言われて思わず赤面してしまった。女の子である私すらクラっとするレベル。流石狐狸精だわ、侮れない。 「梨ちゃん反応してるわ若いのねー。」 「下ネタ得意じゃないんでからかわないで下さいよ…!」 「まぁまぁ、私慣れてるし問題ないわよ。」 油断した隙に気取られた気配、男のサガってやつに敏感な妲己さんが口角をにんまり吊り上げた。 なんだか嫌な予感がして、体を覆っていた浮遊感を身震いで振り払う。 「男の子になって何日目?」 「かれこれ10日、ですかね。鍛練とかしたいですし…。」 「ふぅん…じゃあいっこ聞いていーい?」 『男と女、どっちで抱かれたい?』 言われて思わず噴き出した。 彼女が差し出した酒瓶に合わせて盃を差し出し、注がれた酒を喉に流す。そんな単調な作業の真っ最中にこの爆弾発言。 不意に気管に入った酒がビリビリと染みて咳が止まらない。 「そんなに慌てなくていいじゃない?」 「げ、っほ…!そ、そりゃ慌てまごッふ…!」 余程こんなに驚くと思っていなかったのか、妲己さんが背をさすってくれる。 そうしてやっと落ち着いたころ、彼女は私の顔をみて答を催促した。結局どっちなの、と。 これは、困る。私的には男同士は気にならない。いわんや男女をや。 特にこの世界の人達は美形が多くて目の保養になるし…ほら、妲己さんなんか傾国の美女なんだぜ…? だから、正直私を絡めないで欲しい。見るのが楽しいんだ! 「……へぇ、見るのが好きって貴女も相当なもんねー。」 「?!……こ、声に…」 「ばっちり出てたわよ。」 いいこと聞いたわー!とハイテンションな彼女は、手酌で酒を流し込んだ。 …隣で慌てふためく私を肴に。 さてどうフォローしようか、なんて思っても、自分がどこまで口走ったかを知らない私に成す術は残されていなかったのだけど。 結果後日、褌一丁になった孫市殿に追い掛けられる政宗を見てゲンナリするのは此処だけの話。 カノジョの仕業か!!
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