「今日もむっずかしい顔してますね。」 「……左近殿といい貴女といい、私に構う程暇なのか?」 「私何にも役立たないですから!」 「威張るところじゃないと思うが…」 書写くらいは出来るだろう、そう言って諸葛誕殿が書簡を押し付けて来た。 まあ確かに小中と書道はやったが、授業レベルの楷書な訳で……今目の前で諸葛誕殿の記す文字は中国語だから、正直に言えば読解もままならないと思う。ホントに。 「ぼーっと見ていない!」 「わっ、あ、待って下さいよ!なんて書いてあるかも分からないもの書けませんって!」 ピリッとした電流が肌に刺さったので、慌てて弁明を繰り出す。電流こそ止めど、諸葛誕殿の眉間のシワは深まってしまったようだ。 カタリと筆を置いた彼は、自らの眉間に手を置いて円を描くように揉んだ。どうやら呆れられたらしい。 「いや…いい、私も疲れているようだ…」 「良かったらマッサージします?」 「まっさ…?」 「按摩です按摩。」 その瞬間、諸葛誕殿がガバリと手を退けて目をかっぴらくもんだから、元々大きめの目がさらに大きくなってしまっている。 何事かと驚けば、次には茹蛸ばりに赤くなって…さっきから面白い反応をする人だな。 「け、結構だ!」 「もしかして、人に触られるのが苦手とか…?」 「に、苦手なものはないッ!慣れぬだけで…」 「ならちょっと我慢して下さいねー」 椅子に座った諸葛誕殿の後ろに回って、ぐっと力を込めながら肩を揉んだ。 ガチガチに力が入っていて、このまま揉んでは筋を違えてしまいそう。 後ろから「力を抜いて下さいよー」なんて声を掛けても、彼は身じろぎ一つすることなく前を向いたままである。 肩防具の下に手を入れている所為で叩くマッサージはできそうにないな…なんて思っていたら、もぞりと彼が動いた。 パチン、と音がして、防具が外れる…いや、諸葛誕殿が自分で外したのかな? 「あ。有り難いですー。それでは。」 「……。」 ところが相変わらず力は入りっぱなし。 これは諦めるしかないかと、両肩に手を置いたまま彼のうなじに額を押し当てた。整髪料の匂いがふんわりと香る。 防具を外したらもっと細いかと思っていた体は、意外としっかりしてて……って、また体強張ったよもう……。 「諸葛誕殿、いつも体に力入ってるんですか?」 「…!だ、誰の所為だと……、っ!」 「??」 ばっと両手を口に当て赤くなった彼が再び急に立ち上がるもんだから、うなじに体重を掛けていた私は盛大に体制を崩すことになった。 転ぶまいと慌てて腰に抱き着いて、諸葛誕殿に粛清される5秒前。 間の悪いひと
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