真+跡
真田→小学生
跡部→高校生
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弦一郎の手を軽く握ってから前を向く。
チラリと弦一郎からの視線を感じたが、スグに他からの視線に紛れて気にはならなかった。何事もなかったかの様にまた弦一郎は前を向く。
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玄関の扉を開いて小さくただいま、と言うとさらに小さな声でおかえり、と返ってきた。
アパートの狭いリビングを横切り自分の部屋に直行してバックを置く。ネクタイを緩めながら鞄から教科書と筆箱を取り出すと自室の扉が二度ノックされた。
「飯があるが…」
「あぁ、後で食べる」
先に食べただろ、と問うと肯定の言葉が返ってきた。そこで会話は途切れ、弦一郎が「では、失礼した」と言うとその場から離れていき、辺りが静まり返る。
(いけ好かねぇガキだ…)
俺が自分の弟に対する評価は昔からこれだった。
昔から融通がきかず話すことさえ鬱陶しく思うのに、二、三年前くらいにテレビで覚えたのか堅苦しい言葉を使うようになったことがさらにその思いを強くする原因となった。
…しかし、あの無駄に真っ直ぐな所が周囲からは好かれ、アイツの周りにはいつも人が集まった。そしてそれは両親も同じだった。表には出さないが弦一郎のことを溺愛し、立派な男になるよう厳しく育てあげようとしていた。
「…………」
力を入れるとパキッとシャーペンの芯が折れ、思わず舌打ちをし、溜め息を吐く。
俺と弦一郎の両親が死んだのは約二年前………俺が高一で弦一郎は小四の頃。飛行機の事故で大量に死んでいった人達の中に彼らもいた。五月十九日ーーーーーー弦一郎の誕生日の二日前が彼らの命日となった。
仕事で外国にいる筈の両親が飛行機に乗っていた理由は、弦一郎の誕生日を祝いたかった。ただそれだけだろう。帰国を俺や弦一郎に言わなかったあたり、サプライズをしたかったのだろうが…………とんだサプライズになったもんだ。
芯が折れ勉強する気も削がれてしまい、ノートを閉じリビングに戻る。炊飯器を覗くとご飯が少なくなっていた。明日の朝で丁度なくなるだろう。野菜と半分だけ残された一匹の魚を冷蔵庫から取り出しテーブルに置くと、俺も床に座る。二年も経てばこの食事の質素さにも慣れてしまう。満足とは言えないが贅沢を言えるほど裕福なわけではない。…と言うか、はっきり言えば貧乏だ。…………育ち盛りの弦一郎には多少悪く思うが、仕方のないことだ。
…明日はご飯を炊かなきゃならねぇからいつもより早く起きてスグに飯を作るか…いや、洗濯物を干す方が先だな。飯が冷めちまう。飯が作り終わる頃には弦一郎も起きてるだろう……朝食を食べ終わった後、米を研いで、…そのあとはいつも通りか。
食べながら頭の中で明日のだいたいの段取りを決め席を立ち上がる。……立ち上がろうとした、が、不意に頭痛と目眩に襲われ目の前が真っ暗となった。
足がふらつき、ついには床に倒れ込む。ガタンと派手な音をたてスグに弦一郎が駆けつけて来たが、その頃にはもう、俺の意識はなくなっていた。
葬式には知らない人ばかりで、まるで自分達が場違いな気分になってくる。涙は出なかったが別に悲しくなかったわけではない。ただ、哀れみか同情かで此方を見ながら小声で話す大人達が妙に気にさわった。
弦一郎の方を少し見ると目元を赤く腫らしてはいるがそれ以外は何ら変わりない。………本当に、いつ見ても可愛いげのないガキだ。
無意識に手に力が込もってしまい思わず弦一郎から目を反らして前を向いた。繋いだ手に力を感じた弦一郎は此方を向くが、何事もなかったかのように前を向く。
あぁ、……可愛くない
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目を覚ますと見覚えのない真っ白な天井が目に入った。首を動かし、周りを見ると自分が見覚えのないベットに寝ており、その傍らには小学生にしては老けた顔をした弦一郎が椅子に腰掛けていた。
「起きたか…」
ちょっと待っていろと言われ弦一郎は姿を消すが、すぐに医者らしき人を連れ、戻ってきた。
説明を聞くにどうやら俺は倒れたようだ。原因は栄養失調。弦一郎は既に聞いていたのか特に驚いた様子は見せなかった。
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受攻シャッフルの真跡兄弟設定に使おうとしたけどここから先がなかなか文が書けず没となりました。またいつか完結させるかも知れませんが未定。
ちなみにこの後は
小さい病室で真田少年と跡部が二人っきりになる→「あまり心配させるな」「一人にしないでくれ」とそんな事を言いながら真田少年が涙ぐんだりする→少し驚いた表情をするが優しく笑い、真田をそっと抱き締める→(そうだ………どんなに可愛くないガキでも…………コイツは大切な、俺の弟なんだ)的なことを思う→抱き締めあった二人の目には、あの時(葬式のとき)流れることのなかった涙が溢れ落ちたのだった。
みたいな雰囲気で兄弟仲良くなって良かったねENDにしようと思ってました。
ここまで考えてるのに文章に出来ない自分を恥じてます。
この話の跡部さまは普通の庶民(親がいる頃は裕福より)で部活はしてないし(寧ろバイトしてる)生徒会長もやってないので、親を亡くして弟の世話をしないといけない可哀想な奴としか見られず、跡部はそんな目を嫌ってあまり人と接しないようにしてる。だけど口調はあの俺様のままなので人が寄り付かず学校ではボッチ設定。
真田はまぁ、小学生だし、周りも二年前の友達の親の話なんてなかなか覚えてないし難しく考えないよねってことで通常運転。
ここからは前の文から派生した妄想だけど、ボッチになってる跡部さまの学校に転入してきた忍足が
「あの一人でおる奴、むっちゃべっぴんさんやね」
「あぁ、跡部か。あいつには関わんねぇ方がいいぜ。無表情で無愛想だし、何より二三年前に両親亡くして弟の世話に忙しいんだとよ」
「それ、本人から聞いたん?」
「親が亡くなったのは本当だぜ。それに結構前にクラスで遊びに行こうってなった時誘ったら『俺様はテメェらと違って忙しいんだ。そんな下らねぇ用で話し掛けんじゃねぇ』って言われたんだよ。ったく、何様のつもりだっつうの」
「ふーん……」
みたいな会話の数ヵ月後、忍足はある日、他校の生徒(詳しく言えば手塚)と楽しそうに話している跡部を発見する。
という感じで
最終的には忍跡で収まる忍→跡+塚(→)跡。ついでに跡部が徐々に友達を連れてくるようになってちょっと嫉妬する真田少年が見たい。書きたい。でも書けないから誰か書いてくれ状態。
手塚は跡部を哀れみの目で見ないで対等に接してきた第一号で、話の前半は手塚にしか心を開いてない跡部さま。後半でようやく何かしらあって忍足にも心開く。手塚とはテニス仲間。そんな妄想。
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