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01 : SF



 次の日の月曜日、教室に入るや否や、鯉登くんが食いかかるように詰め寄ってきた。

 デジャヴを感じる。

 週明けはいつも絡まれてる気がする。
 


「オハヨ、鯉登くん。昨日はごちそうさま」

「飛鳥。月島から聞いたぞ」

「何を」

「メイポロという物は存在しないのだろう。あれは造語だと言っていたぞ」

「へ?そうなの?」

「なんだ、とぼけてるのか?」

「メイプルシロップって、メイポロの木から出てきた樹液の事なんでしょ?じゃあ、メイプルはどこからくるの?」

「知らん」

「あ、わかった!ミツバチじゃなくて、スズメバチが集めた蜜なんじゃない?」



 隣の席で会話していたクラスメイトが「べふっ!」と吹き出すを押し殺した声を出した。



「笑われてるよ、鯉登くん」

「お前が言うたんじゃろが」

「じゃあ、メイプルってどの蜂が集めてくるの?」

「待て、今調べてやる」



 鯉登くんは取り出した携帯の画面を素早く操作すると、やがて画面を私に突き出してきた。

【メープルシロップは、サトウカエデなどの樹液を濃縮した甘味料で……】



「ミツバチ関係ないじゃん!」

「飛鳥は学がないな」

「学がないのは鯉登くんも一緒じゃん。知らなかったんだから」



 それからしばらく色々言い合っていたが、やがてアホらしくなってきて、会話のベクトルは別の方向へと向き始めた。



「そういえば、あの子どうなの?」

「誰の事だ」

「手紙の子。あれから連絡した?」

「何度かラインはした」

「ふーん。どんな事はなすの?」

「別に面白い事は何も話していない」

「いや、なんかあるでしょ」



 気恥ずかしいから話したくないのかと思ったけど、別にそういう訳でもないらしい。

 鯉登くんは険しい表情のまま、私の前の席の椅子に腰掛け、机に膝をついた。



「夏休みの話だとか、進路の話だとか…。よう分からん」

「分かんないの意味が分かんない。私と普段話してるのとあんまり変わらないじゃん」

「飛鳥とは違う。会話のテンポというか…わかるだろ」

「はあ、ふっくらとは……」

「なんだ、その歯に物が挟まったような例えは」

「モノがふんわりしてるのに?」

「せからしか」



 と、ふざけてみたものの、鯉登くんが言いたい事は十分に分かった。

 何度かラインのメッセージなりでやりとりをした事はあるけど、鯉登くんのメッセージは基本簡潔としていて、会話というより箇条書きに近い気がする。

 最近だと私も鯉登くんも馴れてきて、会話もスムーズになってきた。
 でも、やっぱり傾向が変わるわけじゃない。


(手紙の内容から察するに、女の子って感じの子っぽかったしな…)



「まあ、焦らなくていいんじゃね?」



 そう適当に受け流した。



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