尾形が野良猫のようにウチに居着いてしまってから、もう2週間経つが、未だに彼の財力の源を知らない。
基本的に尾形はウチにいて、時々思い出したかのように出掛けて行き、夕方には戻ってくるという生活。
私の銘柄はマルメンだけど、尾形が吸ってるのはパーラメント。
だいたい、3日に1回のペースで新しいカートンを見かけるので、相当早いペースで吸っている。
私の煙草ストックから取ってる様子もないし、1箱をケチケチ吸っている様子もない。
信条上の都合により、家に現金や銀行通帳の類は置かないし、念のために毎回家を出るたびに確認もしているから盗られているという事もない。
時々買ってくる酒類やつまみもだけど、一体どこで稼いでいるんだろう。
「ただいまー……」
さすがに2週間も家に居着かれると、出ていかす気力もなくなり、家にいるのが当然みたいになってきた。
尾形はソファーのいつもの定位置に寝転がって、何かの映画を見ている。
「……………なにこれ?」
いつもと違うのは、テーブルの上に置かれた紙袋の山。
見覚えのある、高級そうな店の名前が書かれた紙袋ばかりだ。
「開けてみろ」
そう言われて素直に開けると、出てくる出てくる。
シャネルの香水、ジルサンダーの靴、ケリーのバッグ。
「どうしたの?なにこれ?」
「やる」
「は?」
「やるっつってんだよ」
「いや、いらないよ……」
持ち上げて、ロゴや持ち手の縫い目を確認すると、しっかりしている。
本物だ…。
「え、マジでこれどうしたの?」
「……………」
尾形は黙ったまま、新しい煙草に火をつけた。
禁煙なんだけど、もう今更言う気もない。
「どうしてまた…、こんな大量に」
「お前に買ってきてやったんだよ」
「いや、そういう冗談いいから。……よく分かんない商売はいいけど、とばっちりは嫌だよ」
タチの悪い冗談に顔をしかめ、紫煙の香りに触発されたようにカバンから煙草を取り出し、尾形の隣に腰掛けた。
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