(現代成長捏造)



深夜、突然インターホンが鳴り響いた。誰かなんて分かり切っているのではいはい、とドアを開けるとそこには団蔵に支えられながらへろへろになっている兵太夫の姿。予想していたものとは少し違う光景に思わず目を見開くと団蔵に苦笑された。

「うわ、なに、どうしたの」

「や、なんか兵ちゃん今日ペース早くてさ」

「なんでまた…」

兵太夫がこんなになるまで酔うなんて珍しい事もあるもんだ。酒の飲み方はわかっている奴だし、今日は仲間内だけだと聞いていたから気を遣う人だっていなかったはずだ。

「俺もよく解んないけど、兵ちゃんがここまで酔っ払うことあんま無いからさ。心配で一応送ってきたってわけ」

「そっか、わざわざありがとうね」

「おーよしこも苦労すんなあ」

「あはは、団蔵もね」

私が言うと団蔵はからかうように笑って、じゃあお互い様だな、と空いてる手でくしゃっと頭を撫でてきたので今度は私が苦笑してみせた。どうやらまたもや考えてることが顔に出ていたようだ。

「おい触んなバ加藤」

「お、兵ちゃんお目覚めですか」

「よしこに触んなっつってんだろ早く手え退けなよちぎるよ」

「いってえ!ちょ、笹山さん痛い痛い!まじで痛いです!」

団蔵の腕をギリギリと掴みながらゆっくりと顔を上げた兵太夫の目は据わっていて、相当飲んだということは目に見て取れた。

「ちょっとやめなよ、わざわざ送ってもらったのに」

「僕はべつに頼んでない」

「そんなふらふらで何言ってるの」

「ふらふらじゃないし」

「あーはいはい、分かった分かった」

「はは、じゃあ邪魔者はそろそろ退散しますよ」

「なんか色々とごめんね団蔵」

「いいっていいって!じゃ、またなー」

「うん、ホントにありがとう。おやすみ」

兵太夫を支えながら軽く手を振ってお礼を言う。団蔵は去り際に、兵ちゃん最近相当疲れがたまってたみたいだからそのせいかもね、とこっそり教えてくれた。確かにここの所、試験やらレポートに追われていたみたいだから道理なのかもしれない。疲れているとお酒も回りやすいって言うし。それにしても、本当にこいつは友人に恵まれている。

「明日ちゃんと団蔵にお礼言いなよ?」

「ねえ、さっきから団蔵団蔵ってうるさいんだけど」

「はあ?」

「そんなに団蔵がいい訳?」

「あのねえ、この期に及んで何言ってるの。この酔っ払いはー」

「ちょっとなにその態度。よしこのくせに」

「はいはい、すみませんねー」

はっきり言って酔っぱらいの嫉妬なんて痛くもかゆくも無い。会話を適当に流しながらまだふらふらしている彼の肩に手を回し、部屋に運び込もうとサンダルを脱いで足を踏みだす。でもそれは叶わなくて、兵太夫は玄関にずるずるとしゃがみこんだ。どうしたのー?と覗き込むと突然引っ張られて、私はすっぽりと兵太夫の腕の中に収められてしまつた。

「兵ちゃーん?ここ玄関なんですけど」

「しってる」

「わたし寒いから部屋に行きたいんですけど」

「んー」

「おーい、」

「んー」

「笹山さーん」

「んー…」

いくら言ってもしがみ付いて離れてくれないので観念して私も彼の背中に手を回す。座り込んだ床の冷たさとは逆に、兵太夫の体温が心地よい。そうえば最近は私も兵太夫も忙しさにかまけていたから、こうしてちゃんとお互いの顔を見るのも久しぶりかもしれない。

「ね、なんか、久しぶりだね」

「ん、」

「学校、お疲れさま」

「そっちこそ、」

中々見ることの出来ない彼の弱々しい姿が可笑しくて可愛くて、ふふ、と笑いを漏らすと何笑ってるのさ、と口を尖らせながらこつりとおでこをくっつけてきた。仕方がないから今夜はもう少しだけ、このお酒臭い愛しい愛しい彼の甘えたに付き合ってやることにしようじゃないか。



(この甘えん坊ー)
(うるさい能天気)




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笹山さんは疲れとかが限界超えると心を許してる人に甘えたくなるタイプだったら萌えるよねって話でした。



お疲れハニー
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