真夜中になると何故か小腹が空く。けれど空腹を満たそうにも生憎冷蔵庫は空っぽで、コンビニに向かうべくモッズコートを羽織って渋々自転車を出す。カチャリ、と鍵を外す音が真っ暗な自転車置場にやけに大きく響いた。

「さっむ…」

昼間はまだかろうじて日差しが暖かいけれど夜は本当に冬そのもの。冷たい風が頬と手を切る感覚がぴりぴりして痛い。手袋とストールをしてくればよかったな、失敗した。でも、この感覚は嫌いじゃない。私は、はぁっと息を吐き出しながら自転車加速させた。

「あれ、信原じゃん!」

「うわ、万年おめでた野郎」

「なに!?なぜだ!」

「こんな真冬にんな格好でうろついてる奴は万年おめでた野郎で十分ですー見てるこっちが寒いわ」

頬を蒸気させながらコンビニに足を踏み入れると、目に入ってきたのは季節感ゼロな格好をした神崎。なんなんだこいつ。このくそ寒いのにロンTに短パンのみってちょっと頭おかしいんじゃないかな。

「これは寒いからこそに決まっているだろう!」

「はあ、なんでまた」

「さみいのに負けたくないからなっ!」

「やっぱおめでた野郎だわ」

私の言葉に再びなぜだー!と大声を上げる神崎にうるさい、とツッコミを入れながらレジでおでんの具を選ぶ。コンビニのおでんって美味しいんだよね。まだ横でやんややんや言っている神崎にふと、目線を移すと彼が抱えている大量の何かが目に入った。

「え、ていうかそんな大量に何を持ってんの?」

「お?何ってスーパーカップだぞ!」

「食べるの?全部?」

「もちろんだ!」

「ああ、そう」

お約束の展開に言葉も出ない。お前にも一個やろうか?と言われたけれど丁重にお断わりした。会計を済ませてどちらともなく一緒に帰り道を歩く。自転車を押しながら串に刺さったはんぺんを食べる私の横で、スーパーカップを頬張る神崎。

「うー!さっみー!!」

「寒がるんだったら食べなきゃいいのに」

「何を言う!これぞ冬の醍醐味だぞ!」

「あっはは、鼻水垂らしながら言うなってのー!」

拳を突き上げて鼻水垂らしながら力説する神崎に思わず笑いが込み上げる。それを見た神崎もへへっと笑った。ああ、今目の前で阿呆な事をやっているこのおめでた野郎が、だんだん可愛く思えてきてしまった私の頭も同じくらいおめでたいのかもしれない。



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次屋と富松でもコンビニネタ書いたのにまたコンビニネタ。もういっそのこと三年でコンビニネタシリーズ化してしまおうかな。



季節感の迷子
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