(成長捏造/転生捏造)
「わ、見て、きりちゃん」
「なんすかー?」
「息が白いよ」
「あ?あーそうっスね」
昨日まで暖かかったのに逆戻りだねえ、と呟きながらよしこ先輩は、はあっと息を吸っては吐いてを繰り返してみせた。この人はなんつーか、本当に無邪気だ。
「でもすごいねえ」
「何がすか?」
「白い息が」
「は?」
「だって自分の息って普段見えないのに、寒いと急に見えるようになるなんてすごく不思議じゃない?」
「はあ、」
そしてこの人は度々不可思議なことを言う。それは昔から変わってない。もう、ずっとずっと昔から。
「昔の人はさぞかし驚いたんだろうねえ」
「先輩前にもそんなこと言ってましたよね」
「え、そうだっけ?」
「あ、いや、気のせいかもしんない」
「えー?なにそれ、変なのー」
「先輩に言われたくないんスけど」
「ぶー」
本当は気のせいじゃない。この会話は遠い昔、確かに交わしたことがある。時々、俺の中に流れ込んでくる記憶みたいな映像。それは俺自身のもので、その記憶ひとつひとつは確かにあったものだ。その中には先輩やみんなも居て俺は忍者、先輩はくのいちを目指して日々励む日常。背景は違えど昔も今みたいにみんなと過ごしている。そういえばあの日ももう春だというのに急に冷え込んだ日だったな。
「先輩は本当今も昔も変わんないね」
「そうかなあ?」
「そうっスよ、」
でも先輩や周りのみんなも大半のやつらはそれを覚えていないようで、俺がいくら「昔の話」をしても首を傾げるだけだ。もちろん覚えてる奴や思い出した奴、何となく、記憶の片隅に覚えている奴も少なからずいる。けれど最近は極力「昔の話」は話さない。いくらその事を話しても伝わらないことに寂しさと虚しさを感じるだけだし、少し疲れてしまったんだ。
この先みんなが「昔の事」を思い出さなくても別にかまわないと言ったら嘘になるけど、今の生活は今の生活で充実しているしまたこうしてみんなと過ごせることに満足はしてる。まあやっぱ思い出してほしいことも沢山あるけどね。
「でもさ、きりちゃん」
「なんすか?」
「きり丸だって変わってないよ、相変わらず銭が好きなとことか。昔は戦場にアルバイト行くくらい銭に目が眩んでたじゃない?今もだけど」
「え、先輩…?」
「…え、あれ?今あたし何かいった?」
「あ、いや…」
「あ、そう?おかしいな、なんか急にぼーっとしちゃって…」
「そ、すか…」
なんだよ今の。なんだよいきなり。なんの前触れもなく突然そんなこと言われたら期待しちゃうじゃないか。もしかして、もしかして、先輩も思い出してくれるかもなんて。ああそうだ、先輩も早く記憶が戻ればいいんだ。俺たちが恋仲だったあの頃のことを。そんでその時2人で交わした約束も早く思い出せばいいのに。
((先輩、また次の春になったら一緒に桜を見てくれますか))
((あら、もちろん))
((約束っすよ))
((うん、約束ね))
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ついに書いてしまった転生ネタ。
それにしても分かりにくすぎるので
どうでも良い解説的な補足的なものを書いてみました。よろしければどうぞ。
果たされぬ遠い契