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残念ながらべた惚れ


部活の帰り道。
新しく入った一年生も一緒に帰ることになった。
もちろん定番の中華まんを食べながら。



「はい、そばの分。」

「わ、ありがと!」



スガくんから渡された中華まんにかぶりつく。
…うん、おいしい。

優しい笑顔で私を見ていたスガくんに、同じように笑いかけながら一緒に歩く。



私たちは一番後ろで、目の前では田中と西谷がはしゃいでる。
…あ、潔子ちゃんがいるからか。
相変わらず美しい潔子ちゃんが大好きなのはよく分かるけどもね、
私も大好きだけどね、中華まん食べてても綺麗ってもはや天使だけど、
そろそろ大人しくしないと…あ。



「お前ら!少しは静かにしろ!!」



ほら、言わんこっちゃない。
呆れながら大地に怒られている二人を見ていると、スガくんがちょっと笑った。



「はあ…あいつらも学習しないなあ。」

「はは、本当にね。」



それからしばらく談笑しているとスガくんがいきなり立ち止まった。
ん?と思って振り返ると、真剣な顔で私を見ていて、少し驚く。



「スガくん…?」



身動きも出来ず、お互い見つめあうこと数秒。

前のほうでは、田中と西谷のでかい声とか旭と日向のエース談義とかが聞こえてくるけど、なんだかここだけ世界が違うような感じ。


どうしようか迷っていると、ちょっと顔が赤いスガくんが手を差し出してきた。
その意図が分かって、私も顔が熱くなる。
うおお…やばい。照れる。死ぬ。

おずおずと、その手の平に手を重ねると、ぎゅっと力強く握られる。

思わず笑っちゃうと、スガくんも声をあげて笑った。



「私たち、付き合ってもう1年半も経つのにね。」

「やっぱり慣れないんだよな。」



いまだに恥ずかしくて手を握るのも戸惑う、とかどんだけ純情なんだよって自分でも思う。
大地と旭にも言われたし。
でもそれが、私たちはいいんだと思ってる。



「あ、でもたまにはそばからしてくれてもいいんだよ?」

「んー…じゃあ、次はそうしよっか!」

「……いや。やっぱり、いい。」

「え?」

「手くらい、俺から握りたいし…さ。」



俯きながら呟くスガくんは、ちょっとだけ見える耳が真っ赤だった。
私もつられるように顔がじわじわ熱を持って、恥ずかしくて俯いた。




(あ!あの二人、手繋いで…)
((しーっ!!))




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