休みの日、モデルと共に


今日は休日。

バスケ部の練習も今日はない。

私はバッシュを買いたいという黒子に誘われ、スポーツ店のある商店街に来ていた。


「あ、テツ。クレープ食べたい」

「…はぁ」

「奢ってよ」


凉子がそう言うと、あからさまに嫌そうな顔をする黒子。

と言っても、普通の人から見れば黒子の表情の変化はわからないだろうが。


今からバッシュを買うというのにそんな金はないと、顔で言っていた。

その顔を見て凉子がむすっとしていると、前から聞き覚えのある声がした。


「あれ、黒子っちと凉子っちじゃないッスか!」

「あれ、涼太じゃん。なんでここに?」


黄瀬涼太―――帝光中キセキの世代の1人。

中2からバスケを始めたくせに天賦の才能でキセキの世代と呼ばれるまでになった生意気なワンコ。

黄瀬はこちらに気づくと同時に両手を広げて駆け寄ってきた。


「…テツ、逃げるぞ」

「はい」


凉子たちは黄瀬とは逆方向に逃げる。


「え!?待ってくださいっスよおお!!」


そんな凉子たちをみて更に追いかけてくる黄瀬に飽き飽きしながら、凉子達は人通りの少ない裏道に逃げ込んだ。

そこで黄瀬を待ち伏せていると、彼は走り込んできたので凉子が足掛けをすると彼は大きく傾いた。


「うおっ!?」


傾いた彼はなんとか体制を整えると、一息ついたあと“酷いっスよ凉子っち!”と顔を真っ赤にして怒り出した。


「酷いじゃねーよ、お前自分の立場考えろ。デルモ(笑)が。」


ワンコのくせに顔はいいから、街中で大声だしたらモデルの黄瀬涼太だってばれるではないか。

いや、ばれること自体は凉子達はどうでもよかった。

巻き込まれたくないのだ。


「お前なぁ、私たちを巻き込んだらお前の大好きな“黒子っち”に嫌われるぞ。」

「す…すんませんッス…」


しょんぼりする彼を前に凉子はため息をつくと、神奈川にいるはずの彼がなぜここにいるのかを訪ねた。


「あぁ、今日は仕事だったんスよ。来月、雑誌の表紙を飾るんスよ!」


そう笑顔で答える黄瀬。

モデル時の黄瀬とは違う表情。


「きょーみない」

「僕もです」


絶対バスケしてるときの方がかっこいいと思うし。


心の中では思っていても絶対口にはださない2人。


冷たい反応の2人に口を尖らせてむくれる黄瀬。


「あ、このあと暇なの?テツのバッシュ買いに行くんだけどさ。来る?」

「!!…行くっス!!」


彼は尻尾を振って黒子と凉子にだきついた。










3人はスポーツ店に着くと、黒子のバッシュを見ながら一通り中を回ってた。

なにか新商品がないかを探しているのだ。


「あ、バスケ部のテープそろそろ切れるんだった。レシートあれば部費から降りるかな…。ちょっとリコ先輩に電話してくる」


そう言って凉子が出て行くのを見て、黄瀬は黒子に話しかけた。


「凉子っち、バスケ部に入ったんスね。」

「はい、男バスに選手として入りました。」

「ん?男バス!?」


男バスに入ったと聞いて驚いた黄瀬は、黒子に説明を求めた。

黒子はすこしめんどくさそうに答えた。


「うちの学校に女バスはないんです。同好会はあるんですけど、嫌だったみたいで男バスに入部届けをだしたんです。今はとりあえずマネージャーの仕事をしてます。」

「…凉子っちらしいッスね」


男バスに入部するなんて…と呆れ顔で言った黄瀬に“全くです”と返した黒子。


「で、大丈夫なんスか?」

「とりあえずは、ですが。」


そう真剣な顔で言う2人。


「…運動はしたほうがいいと言われているので練習時に一緒にしたりはしていますが、もう一つの方が邪魔をすることがまだあるみたいです。」

「…そうッスか。」

黄瀬はそう言って辛い顔をした。







***





「…わかりました、じゃあとりあえず3つぐらい買って行きますね」


そう言ってリコとの会話を終わらせ、電話を切った。

一息ついて黒子の元へと戻ろうとした瞬間、携帯が手から落ちた。


「……っ、あーらら」


苦笑いを浮かべながら震える右手を見る。

小さく、細かく震えるその手を使って落ちた携帯を拾った。






***







「ただいまー。リコ先輩が3つぐらい買っといてだって。今金ないから一緒に買っといてくれない?」

「わかりました」


黒子はそう言って小さく笑顔を浮かべると、バッシュとテープを持ってレジへと向かった。





「あ、クレープ食べたい。奢ってよデルモさん(笑)」


店をでた後、先程通ったクレープ屋の前を再び通った。

そういや食べたかったんだと思い出した凉子は、黄瀬にねだる。


「デルモって呼ばないでくださいッス!」


そう言いながらも財布を取り出す彼。

さすがキセキの世代のパシリ気質。


「ありがと、涼太」


そう言ってクレープを食べる凉子をみて、黄瀬は顔を赤くした。











休みの日、モデルと共に




(おいデルモ、次はパフェがいい)

(あ、僕シェイクで)

(なんで俺なんスか!!)






…………………

黄瀬くんだしてみました。

黄瀬くんって神奈川に一人暮らししてるのかな?
神奈川まで通ってるのかな?




(20120729)




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