ここから開幕、ヨーイドン
「……えっと。どーも、入部希望します入船です。よろしくお願いします。」
そう言ってペコリと頭をさげた入船と名乗る少女。
見た目はまぁ美人。
胸は…なさそう。
私は唖然とした。
「…ここ、男バスなんだけど?」
「あ、わかってます。」
いやいや、わかってますじゃないでしょ!
***
「期待の新人になりそうな子が二人も来るなんて、ついてるわね!」
「あぁ、そうだな。」
バスケ部は、去年できたばかりだったため先輩という存在がいなかった。
だから、今は休学中の木吉を中心としてバスケ部をつくった。
でもやはり6人しかいない中での試合はキツイものがあった。
だから今年入部してくれるのはとても嬉しいことだった。
嬉しいことではあったのだが…。
「でも、この子どうしよう…」
「なんだ、問題児でもきたか?」
そう言って日向はリコの持つ入部届けをのぞき見た。
「えーっと…入船凉子、帝光中学出身…って帝光バスケ部が二人も来たのか!?」
備考欄に書かれた出身中学を見て日向は目を丸くした。
帝光中学校バスケ部
全中3連覇をしている超有名校の噂は日向の耳にも届いていた。
「すげーじゃん、なにが問題なんだよ?」
「性別のところ、よく見てよ!」
「性別?…お、女ァ!?」
帝光中に女バスがあったか、なんてことは誰も知らないだろう。
「なんで女子が入部届け?」
「ほら、ここって女バス部ないじゃない?作るのだるいし男バスでいいから入れてくれって。」
「んなの、通らないだろ。」
「それが通ったのよ。」
顧問の武田先生がよく見ないままサインしてしまったらしい。
学校にバレたらどうなるか…。
「とりあえず今日の顔合わせに来るみたい。会ってみて。」
「お、おう…」
***
放課後、バスケ部に入部希望をした1年たちが体育館に集まった。
「あ、凉子さん。」
「お、テツ。私も入ることにしたわ、バスケ部」
「え、男バスに入るんですか?」
「おう」
黒子と凉子は後ろのほうで話しながら先輩が来るのをまっていた。
そのまま数分話していると、リコが部室から顔をだした。
「あ、集まってるわね。男子バスケ部監督、相田リコです。よろしく!」
「「「えええ!?」」」
マネージャーかと思いきや監督と名乗る彼女に一同は驚いた。
それから服を脱げ発言、帝光中シックスマンの存在、火神大我の異様な気質などなど驚くことはたくさんあったのだが、やはり皆が一番気になっていたのはジャージ姿で平然と立っている女子の姿だった。
「それで、えーっと。入船さん?」
「はい?」
「もう一度言うわ、ここは男バス部よ。本当に入るの?試合には出られないし、他の教師に何言われるかわからないわよ?」
「あ、入ります。テツもいるし。」
これまたあっさりと…と冷や汗ダラダラな監督、リコ。
それに対してボーっとしながら淡々と返事をする凉子。
「まぁ訳あって普段から全力疾走とかできないんで、普段はマネージャーみたいな仕事をしたいとは思ってますが。」
という彼女の発言により、凉子は表ではマネージャーということで話がついた。
ここから開幕、ヨーイドン(今年の一年ってホントなんなの!?)
(20120721)
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