食べちゃうぞが冗談に聞こえません





テツくんとの試合に負けたその日の夜。

元気そうな素振りはしてたけど、やっぱりまだショックは隠せないみたい。

だって…。



「……澪っち!」

「…なに?」



辛い時や悲しいときでも彼は笑う。

笑いながら彼の部屋のベランダから私の名前を呼ぶ。

部屋がすぐ隣にあるため、ベランダをつたえばすぐに私の部屋に来られる距離なのに、わざわざ呼び出す。

いつも勝手に侵入してくるくせに。


それが彼の癖。


だから、彼が辛いときはすぐにわかる。



「いや、澪っちと話がしたくなって。」



ヘラリと笑う彼だが、やはり元気はない。

負けたこと、よっぽど悔しいんだな。


「で?私を呼んだからには話のタネがあるんでしょうね?」

「へ?…えっと。」

「……」


彼はこういうとき、弱みを吐かない。

吐き出しちゃえばいいのにと思いながら、私はいつも彼の話を待つ。


「あ、あのさ!マネージャーの件は俺が明日朝練の時に主将に言っとくから、放課後見学に来てほしいッス!」

「その話3回目」

「う…っ」


なんで男の子って強がるんだろうね。

私はため息をつきながらベランダをつたって彼の部屋へと移動した。


「ちょ、澪っち!?」

「なに?」

「いや、なんで…」


彼が私の部屋に来ることはあっても、私から彼の部屋に行くことはあまりない。

中学校の卒業式の日に同じクラスだったメンバーで集まって彼の部屋でお祝いしたから、それ以来かな。


「相変わらずセンスあるお部屋だこと。」


女の私より綺麗な部屋って、少々ムカつきますな。


「…えっと、澪っち…?」

「話せよ」

「へ?」

「あんたが私を呼ぶときって、いつも何かあった日だよね。それぐらい私だって気づいてる。」

「…っ」


私が気づいてないとでも思ったか、それとも私を呼んでたのが無意識だったのか。

…多分両方だろうな。


「今日負けたこと、そんなに悔しかったの?」

「…時々澪っちがイケメンすぎて辛いっス」

「…おい」


話せよって…話せよって…!

と顔を手で隠しながら悶える彼。

私、帰っていいかな。


ため息をつきながら私は彼のベッドの上に座った。

ふと時計を見たら時刻は23:30を回っていて、彼の朝練が少し心配になった。


「話すなら話す、話さないなら寝る、どっちかしなさいよ。明日も朝練なんでしょ?」


そう言うと彼は少し黙ってから“じゃあ…”と言うと、彼は私ごとベッドに潜った。


「っちょ…!!」

「一緒に寝てくれないッスか?」

「…!?」


彼の顔が近い。

苦笑いを浮かべたイケメンくんに逆らえる筈もなく…。


「…ハァ。今日だけよ。」

「ハイッス!」


まぁ、これで彼が明日から元気になるのならいっか。

私も甘いな…なんて考えながら、彼に言った。





「…私の部屋とあんたの部屋の窓、閉めてきなさい。」

「あ…」




食べちゃうぞが冗談に聞こえません




(澪っち美味しそうな匂いッスね)
(…今日、私は生き延びることができるのか)





…………………

ベランダつたって会えるような幼馴染が羨ましすぎる結果です(笑)
私の家のまわり、おばあさんだらけだからな…




(20120715)

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