文化祭準備の悲劇
文化祭前日。
今日は1日文化祭準備ということで皆かなり張り切っていた。
特に我がクラスは必ず優秀賞貰うとかなんとかで燃え上がっていた。
「澪…クールな性格だし、顔も整ってるから似合うとは思ってたけど…」
「これはヤバイわ」
出来上がった燕尾服を着てこいと言われ、更衣室で渋々着た私をみた女の子達はそう言ってクラスまで私を引っ張っていった。
抵抗も虚しくなるだけだと初期に悟った私はされっぱなしの状態だ。
「見てー!!我がクラスの男共よりイケメン連れてきたよー!!」
「いや、イケメンって言われても嬉しくねーし…」
ざわめくクラスメイト達。
普段遭遇しない騒がれ様にいい加減恥ずかしくなり更衣室に戻ろうと後ろにある扉を開けようとした瞬間、ガラガラとその扉が開いた。
そしてその先にいたのは、明るい黄色の生地でできた豪華なドレスを着た涼太だった。
涼太は私と同じく女の子達に無理矢理連れて来られたようで、私と目が合った瞬間顔を真っ赤にしていた。
つられて赤くなる私を見て、井上くんが笑いながら間に来た。
「いやー、見違えたなぁお前ら」
涼太は化粧もされたらしく、顔も整っていて睫毛も長いからか正に清楚な可愛い女の子となっていた。
まわりで男子が涼太に“涼ちゃーん!結婚してー!!”と持て囃す理由もわかる気がするぐらい、涼太は完璧に似合っていた。
ただ、身長は流石にカバーできなくて、かなり長身なお姫様ではあるが。
「澪っち助けてええ!!視線が怖いっス!!」
「安心しろ、私もだ」
抱き着いてきた彼。
見た目の性別は完全に逆なのに身長差やら声質やらのせいで違和感しか生まれないその奇妙な光景にも関わらず、写メの音が絶えない。
前日からこんなに遊ばれているのに当日どうなってしまうのか、今からとても不安だ。
…というか
「涼太、あんたこの前私を守るって言ったくせになにしてんだコラ」
「ご…ごめんなさいっス」
涼太は、未だに携帯を構えて悶える女の子達から逃げるために私を盾にしていた。
「あぁ、ダメダメ!執事はお嬢様に敬語で話さなきゃ!!」
「………はい?」
私が涼太に敬語…
クラスメイトが吐いたその言葉を聞いた瞬間、私の顔を覗いてニヤニヤしてきた涼太の顔にパンチ。
「どうか致しましたかお嬢様お顔が不恰好ですが医者でもお呼びしましょうか」
「痛い!!痛いっス!!」
明日なんて来なければいい。
私はため息をつきながら更衣室へと戻った。
文化祭準備の悲劇
(涼太のせいで遊ばれてる…)
(覚えとけよ…涼太ェ)
(なんで睨むんスか!?)
……………………………………
よく男装女装喫茶とか文化祭のネタになるけど、実際見たのは大学がはじめてだなぁ…
(20121213)
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