それは私を導く魔法の言葉で





…小6の頃。

涼太のことを好きな子達に突き飛ばされたあと、確か手をついたときに捻って赤く腫れたんだった。

でも保健室に行くと説明しなくちゃいけなくなって。

それがめんどくさいと思ったから、放置してたんだ。


放課後、一緒に帰ろうと寄ってきた黄瀬に捻ったことバレて。

あいつ、大慌てしながら私の捻ってない方の手を掴んで保健室に連れてかれたっけ。

保健室で先生にも涼太にも怒られて、でも少し嬉しかった。




中2の頃。

体育館の倉庫に閉じ込められたときは流石に少し驚いたっけ。

犯人の女子に呼び出されたと思ったら突然倉庫に突き飛ばされて。

ゲラゲラ笑いながら鍵をかけて去っていく音がして。


それが確かバスケ部の朝練の後で。

私が早退するのはおかしいって思ってくれた涼太が懸命に探してくれて。

…そうだ。私が倉庫で寝てたら“澪っち見つけた!!”って汗だくになりながら笑顔で開けてくれたっけ。


その後、私を閉じ込めた女子たちが泣きながら謝罪してくれた。

涼太はこいつらになにをしたのだろう…。そう思うと少し笑えた。





涼太はなんだかんだでいつも私を助けてくれた。

なのに私は女子達の反感を買うのがめんどくさくて、“涼太”から“黄瀬”って呼ぶようになって。

あえて遠ざけたり、冷たい言葉を言ったりもして。


私、最低だったな。




今回の件だってそうだ。

彼は私の部屋ですごく不安気な顔で私を心配してくれた。

あの時、素直になってたら涼太をここまで傷つけずに解決できたのかもしれない。




やっぱり…謝るべきだな。





そこで私の意識は遠くなった。




















「…………」


次の瞬間目を開けるとそこは一面真っ白な知らない世界で、よく見渡すとそこが病院だってわかって。

左手に温かみを感じて見ると、そこには眠ってる涼太の姿があって。


また、迷惑かけちゃったな…。


私は頭痛に耐えながら上半身をあげ、右手で涼太の頭を撫でた。


相変わらずサラサラで綺麗な髪で、無性にイラっときたからボサボサになるまで撫でまくった。

すると静かにゆっくりと開く彼の瞳。


「…おはよ、涼太」


彼にそう言うと、まだ寝ぼけているのか“…澪っち?”と目をこすりながら言ったあと、突然覚醒した。


「…澪っち!!」


彼は私に飛びつくかのように抱きしめてきた。


「…遅いっスよ、起きるの。」

「ごめんごめん」


私の耳元ですすりながらそう言った彼に小さく謝りながら彼の頭を撫でた。
















「…おばさんに連絡してくるッス。澪っちはまだ横になってて?お医者さんも呼んでくるから」

「わかった」


彼がそう言って出て行ったあと、私は今がいつの何時なのかを見るために携帯を開いた。


「…げ。まだ朝5時…。ってか1週間も寝てたのかよ。」

どおりで体がうまく動かないわけだ。

私はまた迷惑な時間に目覚めたな…なんて苦笑いしてたら涼太が医者を連れて帰ってきた。

お母さんたちは今から行くと言っていたらしいが、涼太がもう少し休んでから来たほうがいいってそれを止めてくれたみたい。

ナイス、涼太。





その後、少し検診をした。

頭の痛みはまだあるけど、目覚めは悪くない。

先生にそう言うと、結果は良好だが検査入院が必要だと言われた。



「検査入院…ですか?」

「といっても今日1日だけ入院してもらって様子を見るぐらいなんで、安心してください。」


隣にいた涼太は、先生のその言葉に私より喜んでて少し呆気にとられた。

先生の隣に立っていた看護師さんが、そんな涼太をみてとんでもない発言をした。


「モデルの黄瀬さんです…よね?こんなにかっこよくて優しい彼氏なんて羨ましいですね!」

「ッ…!?」

普段から彼氏かと聞かれたことはあったが、ここまで直球に彼氏だと勘違いされたのは初めてで思わず真っ赤になる私の顔。

慌てて否定しようとしながら涼太の顔をみると、彼はとても優しい顔で私を見ていた。


「まだ彼氏になれてはないッスけど、好きな人ではあるッスよ」


看護師さんにそう宣言する彼。


その顔は、ズルい。


「……ッ、なに言ってんの…」


あまりに突拍子な彼のその言葉に私は混乱して頭痛がひどくなった。


私を好き?彼が?ただの幼馴染だと思ってた彼が?



ニヤニヤする先生と看護師さん、いい笑顔で私を見つめる涼太。



そんな視線を浴びて、私が布団の中の世界に逃げ込んだのは言うまでもない。








……………………………

黄瀬くんにはナチュラルに言わせたかった!


(20120821)



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