「はい、あーん」
「あー」
「おいしー?」
「おんしー」


にこにこ笑う頬に、チョコレートが付いていたので拭う。光さんに作ったトリュフを、息子と一つずつ味見と称してつまんだ。夕食はもう出来ているのに、昼に作ったそれをどうしても食べたくて、つい二人で食べてしまったのだ。

おいしいねえと言われて、おいしいねえと返事をする。…間抜けな会話だ。顔は光さんそっくりなのに、ころころ忙しく変わる表情やへらっと笑うときの仕草は私に似ているらしい。しかし、光さんに似ている似ていると言われると、光さんそっくりに賢いイケメンになるんだぞ、と念じていた甲斐があるなあ。



二人で笑い合ってると、ガチャガチャと玄関が開く音がしたので、光さんを迎えに行く息子の背中を追い掛けるように行くと、そこには「ただいま」としゃがんで息子を抱きしめる光さんがいた。


「おかえりなさい」
「おん、ただいま。」
「夕食できてるから、着替えてね」
「ああ、おん。…あとこれ、やるわ」


そういって白い小さなブランドのショップバックを渡される。なに、と顔を上げると既に光さんは、騒ぐ息子を片手で抱き上げながらリビングに行ってしまった。中身を開けると、そこには可愛らしいけど可愛すぎない、ピンクゴールドのネックレスが輝いていた。

びっくりしすぎて急いで光さんに駆けていくと、テレビの中のヒーローに夢中な息子の後ろのソファーに、ネクタイを外したワイシャツ姿の光さんがどっしり座っていた。光さん、と呼び掛けると、背もたれに左腕を乗っけてこちらに振り向いた顔が、意地悪そうに笑っている。



「こ、これ」
「えーやん、たまには」
「でも、ホワイトデーは、いつもドライブじゃ…」
「今年はな、プレゼントしたかってん」
「でも、悪いです」
「…気に入らん?」


違いますよ!と言うと笑いながら、じゃあえーやん、と屈ませられ、頭を撫でられた。ずるい。顔を赤くしながら頬を膨らませると、光さんは耳に口を寄せて、囁く。


「じゃあ、こいつの兄弟でお返ししてもらうっちゅうんはだめ?」
「それは、」話が違うと続くはずの言葉は光さんに飲み込まれた。


熱い熱いキスのあとに、甘えるような低い声で、だめ?と囁かれたら、もう、



「いいです、よ」




「おかあさん、おなかすいたー」「あっ!ごめん、あっためなおしてくる!」バタバタ「…なあ」「ん?」「お前兄貴になるらしいで」「え!やったあ!いつ?いつ?」「(うわああああ)」




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