ほう、と感嘆のため息が出てしまった。幸せそうに優しい表情をしている仁王先輩と、何より、綺麗な純白のドレスに身を包んで、柔らかく微笑んでいるお嫁さんを見ると、こちらまで幸せな気分になってしまう。もう胸がいっぱいだ。

協会の中で、今座っているは長椅子は一列、元立海テニス部でくくられていて、赤也くんはぼろ泣きだし、丸井先輩の家族は三人揃ってはしゃいでるし、……なんだか騒がしくて、でもこういう結婚式っていいなあなんて憧れてしまう。





「口、あいてるよ」


耳元で囁かれて、はっとする。思わず口元を手で覆うと、「嘘だよ」と微笑まれる。騙すなんて、と睨みつけると、少し笑って流された。…こういう、少し意地悪なところは昔から――彼が部長で私がマネージャーのときから――変わらない。



「精市さん」
「ん?」
「いえ、…お二人、綺麗ですね」
「うん」


そうだね、と言いながら、何かを考えるように丸井家の一人娘をちらりと見てから私をじっと見つめ………って、なんだなんだ。



「ねえ?」
「は、はい」
「同棲しない?」
「えっ、」
「ていうか結婚式しよう」
「え!」
「ウェディングドレス着てね、白無垢も」
「(え?え?え?)」
「俺は何でもいいけど女の子は6月がいいんだっけ?」
「(展開についていけない私は今どんな状況なの)」
「……あれ」
「(ショート中)」
「ああ、急すぎたよね」
「あ、あの、せい、精市さん…?」
「まず、ゼクシィ買おうか」
「それって、……あの」
「ああ、泣かないで。だからね、」




「お嫁さんになって?」




人の結婚式はそっちのけでプロポーズなんて、精市さんは空気が読めてない。だけど、それ以上に嬉しすぎて涙が止まらなくて嗚咽なんか漏らしちゃってる私は相当空気読めてない。もし誰かに見られたら、私は仁王先輩に失恋したみたいな可哀想な女の子になるんだろうけど、本当は、大好きな人にプロポーズされた幸せな女の子だ。長椅子の隅でこそこそとそんなことをしていた私たちに、誰も気づいていないようだった。

はい、と小さな声で返事をすると、精市さんは今までで一番といってもいいくらい、穏やかで柔らかく微笑んだ。




「それでは、新郎新婦、誓いのキスを」





その神父さんの言葉に、二人してささやかに笑って、触れるだけのキスをした。


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テーマ「人外ファンタジー」
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