太陽に照らされて真新しい白いポストが光沢しているのを、洗濯物を干しながら視界の端に入れていた。そのとき、私の隣から小さな足が駆けていった。ツインテールを揺らしながら、覚束ない足どりでポストまで駆けて行き、薄ピンクに周りを可愛らしく飾られた手紙を私の元に持って来て差し出した。差出人は「仁王雅治」としっかりとした字と、それに寄り添うように書かれた可愛らしい字で彩られている、二人からだった。


「マサくんから?」
「そうだよ、マサくんから」
「なんてー?」


くりくりとした、あのひとにそっくりな瞳は好奇心いっぱいで私を覗きみる。思わず笑みを零してしまった。そっと手紙を開けると、やはり畏まった文面が綴られていたのだけど、最後には「やったぜよ」とピースまで付けて彼の顔文字があって、噴き出してしまう。ばかすぎる。


「ママ、なんて書いてあったの?」
「実はね」
「うんうん」
「マサくん結婚するんだって!」
「きゃあー!」


よかったねー!と二人できゃあきゃあはしゃいでいると、リビングから庭に繋がるベランダから、ブン太が顔を覗かせた。


「なに、どした」
「パパー!マサくん結婚!」
「ね、すごいよねー!」
「ちょ、え、嘘、見せろ」


適当にサンダルをひっかけ、私の手元から招待状を引ったくった。内容に目を通したブン太は、柔らかく微笑んで馬鹿だな、なんて言って私に同意を求めるように言った。

それがあまりにも仁王のお兄さんみたいな顔をしていて、少し噴き出してしまった。


「…なんだよ」
「なんでもないよ」
「ったく、」
「ただ…」
「ただ?」
「幸せになってほしいって思ったの」



そう笑って、庭で遊び始めた我が子を見ていたブン太に擦り寄れば、腰に片手を巻かれ、そのままゆっくりと引き寄せられる。こめかみに、キスをひとつされた。優しい笑みにつられて、だけど少し不意をつかれたことが恥ずかしくて私もはにかむように笑った。



「…仁王も結婚かあ」
「うん?」
「結婚してよかったって、…思ってるから」
「え」
「そんだけ!」


にかりと昔のように笑って、ブン太が庭に飛び込んでいく。こんな些細なことが幸せで、私は毎日満たされている。結婚する前よりもっともっと、もっと好きだよ。ブン太がいて、私がいて、その真ん中には唯一無二の宝物がいる。



結婚してよかったって、私も思ってるよ。





(どうか旧友が幸せであれと願う、そんな昼下がり。)




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