ブン太くんはいつでもヒーローだった。小さいときは、周りより小さめの体を存分に使い、周りの気を攫って、常に彼の側にはひとがいた。私が近所の体の大きな小学生にいじめられているところを、ブン太くんが助けてくれたこともあった。あのときは殴りかかったブン太くんが、少しだけ膝を擦りむいただけだったけれど、白い肌にぽつり、と赤く染まる傷を見て私は思わず泣き出してしまったのだ。泣き止まない私の手を引っ張り、彼は家まで送り、私の母に「ありがとう」と褒められたときに「おれはおとこのこだから、おんなのこ、まもんなくちゃいけないって、おとうさんいってたから」としっかりとした言葉で言っていたのを思い出す。私はブン太くんの隣で、彼の手をぎゅう、と繋ぎながら、なんとも言いがたい頼もしさを感じて、ふと兄が見ていた戦隊もののヒーローと彼を重ね合わていた。私だけの、ヒーローだった。
 けれど、今彼は学校期待の人となり、同時に私だけのヒーローではなくなってしまった。強豪テニス部を勝利へと導く一人となったのだ。きらきら輝く彼の勢いは年を重ねても変わらず、いつでも周りにはそれと同じくらいきらきらしている人たちがいる。


 私はひっそりと生きていたので、彼のファンや彼自身にも関わりなく過ごしてきた。私ごときが幼馴染とばれても、きっと相手になどされないと思うけれど、彼の迷惑にはなりたくないから、念の為だ。決して嫌いになったとか、そういうのではない。いつだって、彼は私の羨望の先にいるのだから。



「なあ、お前さん。ブンちゃんの幼馴染じゃろ」


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -