夕暮れの教室から見える校庭に、見慣れた人が立っている。わたしを大好きなひとであり、わたしが大好きなひとでもある。親が決めた相手だけれど、わたしと彼は望んで好き合っている。そこだけは間違えないでもらいたい。



怒気の裏に潜むのは相手への心配。人には分かりづらい、彼の行動ひとつひとつに隠れた意味すべてに気づいているのは、きっとわたしだけ。幸村くんや柳くんでさえ理解しきれてないところまで、わたしは全て知っている。それは自惚れでも過信でもない、真実。



ちょっと触れれば赤くなる頬、浮遊する視線、優しい微笑み。すべて、わたしだけが知っていること。



ふと、外にいる弦一郎と視線が重なる。そっと笑って手を小さく振ると、厳しく後輩を見つめていた瞳が、柔らかく細められた。それだけで、わたしは頬を緩め、心があたためられてしまう。すき、すき、愛おしい。くるりと向けられる大きな背中にいますぐ抱き着いてしまいたい。


頬杖をついて、左手の薬指に嵌まる指輪を見つめる。それは小さい頃に弦一郎がくれた、プラスチックの指輪。本物をくれるのは、わたしが彼に苗字を揃えるとき。









このプラスチックの指輪がプラチナをまとうその日は、小さい頃の約束通りのジューンブライドだ。





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