な、なんて快挙だ。


俺はいま自分に起こっていることが信じられなくて、口がぱかっとあいたまま手元のテスト用紙を見つめる。やべ、感動で涙出そう。…なんと、数学でやっと満点を取れたのだ。今回こそは頑張って頑張って頑張って、彼女にご褒美を貰おうと目論んでいたわけであり、下心あっての努力だったわけだれども、……思いの外単純に「100」、アンダーライン、アンダーライン、の赤い文字が嬉しい。




これは何かご褒美、よりもまず褒めてほしい…!、と彼女を探しても見つからない(テストのときは番号順)。あれ?…あれっ?いない。ウ〜ン、と小首を傾げていると、ブンちゃんに「あいつなら屋上じゃね」と言われた。




*




ブンちゃんの言う通り屋上に行くと、背を向けてうずくまる彼女がいた。ただならぬ雰囲気を感じて、テスト用紙を適当に……いやできるだけ丁寧に折ってポケットに入れた。




「どしたんじゃ」
「!、に、にお?」
「泣いとるん?」
「な、ないてない!」
「へーえ、じゃあ顔見せて?」
「やだ!…って、や、っばか!」



そっと両の頬を包んで上を向かせると、やっぱり泣いていた。鼻水と涙でぐちゃぐちゃな顔。目元と鼻の頭は真っ赤。ついでに俺に見られた恥ずかしさからか、もう顔も真っ赤。可愛いなあ。カーディガンの裾で「泣くんじゃなかよ、」と言って軽く目元の涙を拭う。ついでにティッシュも出す。


「む、む」
「ほれ、鼻ちーん」
「ん゛〜」




…なんだこの素直な可愛いさ!いつもなら「触るなばかあ!」って顔を真っ赤にさせながら殴られるんだけど、今日は、今日は触っても怒られない!ナニコレ!本当に今日ツイてる!神様ありがとう!俺は愛に生きる!



「あ、あ、あ、あひが、と」
「お、おん」
「で、なんで泣いたん」
「な、泣いてない!ちょっと、その、…テスト赤点、で」
「ああそれで(可愛いのう)」
「ただ、悔しかったの」
「ほお(にやにや)」
「な、なによ」
「いや?」



すごい可愛くてにやにやと緩む頬を隠さず、彼女の前にしゃがんでいると、不意打ちで平手打ちされた。リアルにパァァァアアアン!と音がする。痛い。痛いが可愛い。しかし痛い。き、効いたぜよ。





「べっべつに、におと帰れなくなるからさみしいとか、じゃ、ないもん!うぬぼれんなよ、ば、ばあか!」








首まで真っ赤にしながら、しかもそんな顔で…ある意味説得力がありすぎて、嬉しくて死にそう。死ぬのか俺。死ぬ原因が彼女の可愛すぎとか、俺最高に格好悪いけど最高に幸せすぎる。

なんて快挙だ。