「はよ」
「おっ、おは、よ!」
「なんやまだ慣れへんの」
ククッと笑う財前くんから思わず目を逸らす。恥ずかしい…!付き合って一ヶ月、それでも慣れない。だだだだだって財前くん顔小さいしかっこいいし!見れない!いや、すきになったきっかけは顔じゃなくて優しいところなんだけど、でも慣れない。はやく来ている私と、朝練を終えた財前のふたりきりの教室は静か過ぎて、私の心臓の音が聞こえてしまいそう。目を伏せていると財前くんは私の座っている席の、前の椅子に腰掛け、背もたれを抱いてこちらに向いた。近い近い近い近い近い近い!
「なあ」
「う、うん」
「こっち見いや」
「う、ん。…っ!」
ばっちり合った視線が恥ずかしくて、また下を向こうとすると財前くんに顎を支えられ、前を向かされた。ああああああ!顔赤いで、と財前くんは意地悪にニヤリと笑う。
「ご、ごめん…」
「なんで謝るん」
「だって、」
「…ふはっ」
「!」
「林檎みたいや」
財前くんの細く綺麗な、大きな手の平が私の髪を撫でて、頬に触れた。じわじわと瞼が、恥ずかしさのあまり熱くなる。どうしようどうしよう!うわあ財前くん睫毛長い肌綺麗いいい!!
ちゅ、
「ざ、ざ、」
「唇は、また今度やな」
彼の唇が触れた頬を手でおさえて、私は逃げようとしたけれど、それも空しく財前くんは私の手を掴んで椅子に座らせる。やめて勘弁してくださいいいいい!
「まだやで」
(私の彼氏は優しくてかっこよくて、すごく意地悪です)