朝の静かな教室で隣同士座りながら、何を話すわけでもなく、ただノートに文字を連ねていく。ふと外を見ると雲が淀んでいて雨を予感させていた。どうりで少しべたつくわけだ。素肌にワイシャツが擦れる度に気持ち悪さを感じていたので、第二ボタンを外そうと右手を掛ける。すると隣からやんわりと手首を捕まれて、「だめですよ」と制されてしまった。当の本人はこのじめっとした雰囲気にそぐわず、首元まできちっとボタンがしめられて、そこには綺麗に結ばれたネクタイが鎮座し、爽やかな笑みを向ける柳生が羨ましくて、すべすべの頬を捕まれてる反対の手で摘んだ。なんです、なんて楽しげに笑う彼には敵わない。捕まれた右手首からするすると、柳生の大きくしなやかで美しい手がおりてくる。自然に私の小さくみすぼらしい手を取り、机に置いてなんともいとおしげに撫でた。その、優しい表情が好きだけど恥ずかしくて、思わず手を引っ込めて睨むと、また柳生は笑う。何が嬉しいのか、彼の口元は緩やかに柔らかく孤を描き、私に囁く。髪を撫でて、いい色ですね、なんて。金髪だった髪を、彼に近づきたくて、だけどお揃いはなんとなくいやで、ハニーブラウンに染めた髪。うるさい馬鹿、と可愛くない返事にも、柳生は優しく笑う。私はこのひとにうんと甘やかされて、うんと愛されている。とても幸せだけど、私には不釣り合いなくらい大きすぎる幸せ。「好きですよ」と、柳生の、低くて心地いい声が私に耳元で愛を囁く。額を彼の首筋に当てて、「私もすき」と素直に呟いて瞳を閉じると、どくどくと大きな心拍が私に伝うから、おかしくて、もう一度すきだよと言ってみた。添えるように腰に回された腕が少しだけ力む。私も彼の胸元に置いた手に力が入る。ぽつぽつと窓を叩き始めた雨と、どくどくと高まる二人分の心音だけが、朝の教室に響いていた。

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