ブン太の内部進学が決定したとき、あいつは真っ先にバイクの免許を取りに行った。こつこつと溜めてたらしいお小遣いで青い可愛いバイクを買ったと嬉しそうにしていて、びっくりしたのを覚えている。

なんで青なの、と聞くとお前の好きな色じゃん、なんて当然のように言われて、なんだかくすぐったかった。






すっかり私の定位置となった後部座席に座りながら、私は見慣れた駅までの道のりをぼーっと見ていた。震える指先を、ブン太の腰に回して押さえ込む。「苦しいー」とふざけて言うブン太に「ばーか」と言ってみるけど、どうにも緊張してしまって、私のほうが苦しかった。今日は私の、入試の日だ。


先生にも大丈夫と言われ、逆にランクを上げろといわれたところだったけど、すごく不安だった。もちろん、そこの学部で学びたいこと、やりたいことがある意志は誰にも負ける気はしないけど、模試でBでも落ちるやらなにやら…不穏なうわさを耳にしたせいで、これまでの私の努力が太刀打ちできないほど不安に押し潰れてしまいそうだった。

ブォォン、とバイクが止まり、ブン太がヘルメットを取りながら振り向いて、「ほら駅、着いたぞ」と言った。ゆっくり降りてたけれど、中々ヘルメットを取らない私を見て、ブン太が溜め息を吐いた後にヘルメットを取ってくれた。


「なんだよ、どうした」
「私…」
「うん?」
「立海にすればよかったかな…」ばか、と頭を容赦なくはたかれた。
「自分で選んだんだろ。自分の選択に自信持て。俺はお前の選択、応援するっていったろぃ」
「…うん」
「だから、しっかり頑張って来い。お前の頑張りは、俺の自信つきだから」
「なあに、それ」


おかしくなって笑うと、ほら、とブン太が私を押した。私は振り返って、「帰り、迎えに来てね!」と言ってホームに走った。大丈夫、大丈夫と威勢よく走ったものの、自然と俯いてしまっていた。がやがやと賑わう改札を入ったところで、握り締めていた携帯が震えて、思わず体がびくっとしてしまった。はずかしすぎる…。メールを受信しました、と表示されているそれをゆっくり開くと、さっき別れたばかりのブン太からだった。一文一文しっかりと読み、携帯を閉じて、しっかりと一歩を踏み出した。大丈夫、頑張れる。





「顔上げろ!大丈夫、うまくいく!」




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テーマ「人外ファンタジー」
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