ふにっ

「ぎゃあっ」
「色気ねえなあ、アーン?」
「変態!」

呼ばれたと思って振り返れば、両胸を鷲掴みにされた。殴ろうとしても身長差ですでに無謀なことが明らかなので、わたしは腕で肩を抱きながら後ずさる。うーん、と跡部は腕を組み片手で頬杖をつきながらわたしを見る。なんだこのなめ回すような視線は。痺れを切らして「なに!まだなんかあんの!」と怒鳴ると「ああ、それはいいな」と検討違いな返答。

「なにが…」
「その目。それはソソる。なかなかいい。」
「は、はあ?」
「忍足の彼女がかなりエロくてな、お前のエロさも発見してやろうという俺様の優しさだ有り難いだろ」
「むしろ迷惑だしこのあほべ!」

まじこいつ頭おかしいんじゃないの。あのでっかい家……邸に常識を忘れてきたんだろう。「ふうん、お前Bか」とかまじまじと見ながらほざきやがったのでとりあえず足を踏んでおく。

「なんだよ、褒めただろ?」
「褒めてねーよ!ばかか!」
「まあお前はこれからエロくなればいいだろ。落ち込むなって」
「なに勝手に話進めてんの?!落ち込んでないし!」
「俺があの牛女よりエロくしてやるよ。なあに、俺のインサイトにかかればその貧相な胸に「いらねーって言ってんだろばか!」

勝手なことをべらべら言い始めた跡部、もといアホを置いてわたしはとりあえず、元凶とも言える忍足という名の変態眼鏡を殴りに向かおうと、跡部に背中を向ける。すると二の腕を捕まれて正面から抱きしめられた。

「まあ俺はお前くらいが好きだけどな」
「!」

耳元で囁かれて、思わず跡部の足を踏み付けて逃げ出す。赤く色めいた顔を見られたくなかったけれど、後ろから聞こえる笑いにはきっと、ばれてしまったのだろう。ああもう、あの変態。ばか、あほ、あほべ。でも、あんなのに惚れて何年も彼女やってるわたしも、相当のあほだ。
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