意識の遠いところで、なんとなくチャイムが響いているのを感じた。それでも外に行く気にはなれず、ただぼんやりと佇む。何度目のチャイムだろうか、と考えていると、放送部による昼の音楽が流されたので昼食の時間であると気づいた。

そういえば、昼はテニス部で取ることになっている。それを思い出して、億劫だが保健室を後にした。寒い廊下に使い古された上履きが たすたす、と渇いた音を響かせる。

教室に近づけば近づくほど、がやがやと騒がしい声が聞こえて来る。ふと自分の教室の前に、ぽつんと赤い頭がふたつ鞄を抱き抱えながらしゃがみ込んでいた。

俺に気が付くと、ぐるぐるに巻かれたマフラーに顔を埋めながら、にっこにこ笑って駆け寄ってきた。「おっせえんだよ!これ罰ゲームな!」と鞄を押し付けて軽い足取りで前を歩く。

そんなおおらかさになんだかんだで嬉しく感じて、笑みを零しながら着いていく。



部室に行けば、もうみんな居て、幸村に「遅かったじゃないか」と小突かれた。すまんのう、なんていつもの調子で言う。赤也が食べましょう!と笑ったのを合図に、みんながゆっくり食べはじめた。



ああ、あたたかい。





(だけど、指先はまだ少し冷たかった。)




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