私が財前くんに初めてもらったのは、携帯に付けている色違いでお揃いにしたストラップだ。当初ただプレゼント交換をするだけだったのだけれど、いざ交換して開封したとき、それぞれ色違いで相手の好きな色のを買っていたのにはびっくりした。
「何がええかよう分からんかった。」
小学校からの帰り道で、顔を真っ赤にしながら渡してくれた。すごくすごく嬉しくて、今でもちゃんと携帯につけている。
…私と財前くんは「両思い」だけど、告白した当初は小学生で、付き合うだの彼氏彼女だのなんてものへは結び付かず、ただ親友みたいになっていった。
引っ越しのことを話したとき、「これからもいろんなこと話したいねん」と言って強引に携帯の番号を渡された。私との関係を少なからず気にしてくれているのが嬉しくて、小さく泣いてしまった。財前くんは、顔を背けながら不器用に私の頭を撫でてくれていた。
*
「懐かしいなあ」
『あ?何の話やねん、っ、げほ、』
「…財前くん、風邪?」
『あー、ちゃう。声変わり』
「あ、ちょっと低いね。」
『背も伸びたんやで、』
「え!うそ!私全然伸びないのに!」
『はは、男と張り合うてどないすんねん』 「…悔しいじゃん」
『やけど』
「うん?」
『寿々はそのまんまでええよ』
ぽつり、と零された言葉を、私の耳はちゃんと拾っていた。きっとこの向こうで、財前くんは顔を赤くさせているんだろうな。ありがとう、と丁寧に、頬を緩ませながら言うと、彼の後ろから「ひかるー」と彼を呼ぶ声がする。
『すまん、じゃあまた』
「うん、ばいばい」
『寿々』
「ん?」
『…心配してくれておおきに』
ぷつり、と切られた通話に、私は小さく笑みを零した。
(あなたの些細な優しさがこんなにも私を幸せにするんだよ。ねえ、知ってる?)
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