はらはらと散っていく桜の花びらを見上げながら、私はぎゅう、と力強く携帯に付いた青いストラップを握りしめた。


ひさしぶりに感じた東京の空気は、あのひとがいないからか、どこか冷たい。やっぱり、さみしい。無意識に視線はおろしたてのローファーのつま先へ。


…さみしくて不安で溢れるけれど、私はここで、ひとりで頑張らなくちゃいけない。そっと目線を上げて、桜の隙間から零れる日差しを受けながら青空を見た。この空を、彼も見ているんだろうか。



母が写真を撮ろう、と笑って私を手招きした。周りの話し方は先週までいた関西弁はなく、標準語で通っていて、もともとあっちでも標準語を話していたけど、なんだかへんな気持ちになる。



「寿々、撮るからこっちおいで」

「うん」



着るはずだったセーラー服ではない、ブレザーで、タータンチェックのプリーツを揺らして母に駆け寄った。ブブ、と振動した携帯を開いてメールを開くと、添付された写真に、思わず笑みが零れた。

金髪の先輩に肩を組まれて、むすっとした顔で、かっちりとした学ランに身を包んで立っている。きっと春休みの体験入部で仲良くなったといっていた先輩だろう。


彼―――財前くんの携帯には、私の好きな赤色のストラップが揺れている。そう思うと、開いた距離を遡り、彼のもとにいけそうな気がするのだ。



どうか財前くんが楽しい日々を遅れるように。ちらり、とターコイズ色のストラップが揺れた。