「俺は来年、必ず全国で優勝する階段のひとつになる」


せやから、電話は当分できん。そう言った彼の固い決意が、電話越しでもきちんと伝わった。だから私は、「頑張って。応援してるから。」と、笑った。


自分の気持ちを押し込めながら。





*



彼の邪魔にだけはなりたくない。だけど、ただ見ているだけもしていたくない。ただ、力になりたかった。苦しいときに、支えてあげられる力に。けど、今回の決意をしたその裏の悔しさや苦しみに、私は何もできなかった。



あまりにも私自身が勝手すぎて、成長しない自分への悔しさで泣けてきてしまう。財前くんは財前くんなりに頑張ろうとしているのに、私は、?




伝わるだけでいいと言う恋心が、こんなに欲にまみれた苦しいきもちになってしまうなんて、知らなかった。










*






財前くんの電話から一週間。昨日始業式が始まって、二学期はもう始まっているけれど、どうも学校に行ける気持ちではなくて、所謂ズル休み、というやつをしてしまった。そんな私を心配して、親友がわざわざお見舞いに来てくれた。(元気な私を見て
呆れながら笑った。)






「大丈夫?」




その一言になんだか安心というか、とりあえず体の力がフッと抜けて、泣き出してしまった。泣き止むまで背中を擦ってくれて、背中越しに伝わる彼女の優しさが温かくて、さらに涙腺を刺激されてしまいそうになった。




落ち着いてきた頃に、今感じている心をつたない言葉ながらに、心配してくれた親友であるチカに話すと、真剣に私の気持ちと向き合ってくれた。




「そもそも、その、財前くん?と付き合ってるの?」

「………わかん、ない」

「でも彼、絶対嫌ってはいないよ、寿々のこと」

「うん……」




ぽろ、と零れる涙を、チカがタオルで拭ってくれる。今まで溜め込んでいた不安やいろんな気持ちが止め処なく、涙と共に溢れてきてしまう。私と財前くんの曖昧な関係は、互いにそれが壊れないように一線を引いて成り立っている。寂しいなんて、私は彼女じゃないんだから。そう言い聞かせても、心は簡単に納得してくれない。



どうしようもないほどに、彼を想っているから。





「ねえ、寿々」

「う、ん?」

「伝えてみれば?」

「な、何を」

「思ってること全部。私は、いいと思うよ。」

「でも、電話、」

「できないだけで、するな、なんていわれてないでしょう?それに案外、待ってるんじゃないの?」





彼、素直なタイプじゃなさそうだし。とチカがおどけながら笑った。私もつられて笑う。



電話してみても、いいのだろうか。――声が聞きたい。もう一週間は彼の声を聞いていないのだ。あの、耳に優しく響低めの声が聞きたい。寿々、と名前を呼んで欲しい。話がしたい。あほやろ、と笑って、不安を全て包み込むように笑って欲しい。



携帯を握り締めると、カチャ、とストラップが揺れた。チカに笑いかけると、「もう大丈夫そうだね」と笑って、帰ってしまった。本当は今日、彼氏との約束があったらしく、足早に言ってしまった。窓から、掛けて行く背中に感謝の言葉を呟く。ありがとう。





カチ、カチ、と文字盤をいじると、「財前光」が表示された。




(二度目の告白を、あなたはどう受け止めてくれますか。)


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