■ 新しい朝が来るまで
「少々肌寒いな」
明け方、鍛錬を終えた文次郎が部屋へ戻ると既に起きていたらしい仙蔵が寝具を仕舞おうとしているところだった。
「待て仙蔵、後で干しておくからおまえの布団をかしてくれ」
「風呂は」
「入ってきた」
「…ならいい」
仙蔵は寝具を畳んでいた手を止め、すっと立ち上がる。
「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
文次郎は頭から布団を被るとすぐに寝息をたてはじめた。
文次郎の頭を一撫ですると、仙蔵は笑みをこぼしながらはだけた掛け布団をかけなおしてやる。
「…私も甘くなったものだ」
日が昇るまで、あと少し。
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御題はDiscolo様より
2012/8/12 加筆修正
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