戸惑う抱擁


 今朝から調子の悪そうなブン太が心配になって、仁王はブン太のもとを訪れた。

「大丈夫?」
「大丈夫っていいたいとこだけど…大丈夫じゃない……かも、」
「保健室いく?」
「…いんや…でも次ちょっと別んとこでサボるわ」
「んじゃサボるの付き合っちゃる」


 そう言ってサボリ常習犯の仁王とブン太は穴場の教室へと向かう。その教室は随分前から鍵が壊れていて、誰も使わないからサボるには絶好の場所なのだ。

「どこの調子が悪いん?」
「……おなか、」
「なんか変なもんでも食べたん?」
「ちげぇよ。…おまえは一生味わわない痛み―」
「あ―…、…せ―り?」
「……そういうこと―」

 じゃあ、と言って仁王がブン太の背中に回ってぎゅう、と抱き締める。

「俺がさすっちゃるよ」
「……ん、…」

 仁王が優しい手つきでお腹のあたりを撫でて、ブン太は仁王にもたれかかる体勢で静かにゆっくりと息を吐き出す。

「なんかちょっとましになってきたかも……」
「そりゃよかったき、」


 何時の間にかブン太はそのまま眠ってしまって、仁王は柔らかく微笑みながらブン太の前髪をそっとかきあげた。




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2012/6/3
御題は自惚れてんじゃねぇよ様より

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