嘘を吐きますね、すきです 「好きじゃ」 「うそ」 冗談でもそんなこというなバカ、と一世一大の告白は呆気なく終わりを告げた。 日頃の虚言のしっぺ返しがこんな形で返ってくるとは思いもしなかった。ペテン師を名乗るだけあって、今までについた嘘は星の数ほどある。 その中でも珍しい“本当”のことだったのに。狼少年とはまさにこのことだ。 「嘘じゃないき」 「じゃあ嘘じゃないって証拠みせろよ」 証拠。そんなものを示せと言われて何をしろというのだ。態度で示せということならば唇のひとつでも奪ってみせるのだが。 「じゃあ……キスしてみろぃ。好きならそれぐらいできんだろ?」 「ほんまにええんか?」 「…とか言って、どうせできないくせに」 そう言ってブン太は目を閉じ、唇をさしだしてくる。本人がしていいと言っているのだから、別に構わないのだろう。 ブン太の輪郭を指先でなぞって、仁王は躊躇うことなくブン太に口付けた。 「……え?」 「嘘じゃないて、わかってくれたき?」 呆然と仁王を見つめるブン太に、仁王は首を傾げてみせた。 「絶対、絶対の絶対、嘘じゃないっての?」 「そうじゃ、何度も言ってるじゃろ」 嘘を吐きますね、すきです (それも嘘、) ----- 2012/6/3 御題は自惚れてんじゃねぇよ様より |