■ その性癖と理性についての考察

 今どきスカートめくりなんて小学生男子でもやらない。

 とはいえ男子にとって女子のスカートの中というのは未知の領域であって、なかなかに興味をそそられるものである。
 その精神は小学生、中学生とも変わらないらしい。中学生男子ならよくあること。そう、仁王のクラスでは今スカートめくりが流行している。

 やられる側はきゃあだの変態だの散々な暴言を吐いてはくるが実のところめくられるのも満更でもないのかな、なんて。
 スカートめくりにご熱心なクラスメイトを眺めつつ仁王はその光景を頬杖をつきながら見守っていた。
 単に遊びの一環で楽しんでいる奴と、割と本気でやってる奴。大体はその二通りに分類される。ぱっと見の判別はつけにくいが、目を見ればわかる。
 お得意の人間観察のスイッチが入って仁王は食い入るように教室内の光景に目を凝らした。

「な―に熱心に見てんだよ、自ら手を下さずして人のパンツ見るなんて男らしくねぇだろぃ」

 ぱこ、と丸めた教科書で頭をたたかれて仁王ははっと我に帰る。

「パンツ見てたわけじゃないき」
「じゃあ何見てたんだ?」
「……人間観察しちょったんじゃ」

 疑いの眼差しを向けてくる丸井に仁王は一応の否定の意志を伝える。

「別に、女子のパンツとかあんま興味ないき」
「ふ―ん。でもさ、さっき仁王俺のことすっごい見てたよな?」
「……は?」
「とぼけても無駄。仁王ずっと俺のスカートないし足を凝視してた」
「……それは、…」
「それも人間観察?」

 仁王はぐ、と言葉に詰まる。
 丸井のいうようにさっき授業中に丸井を、というより丸井の足を見つめていたのは事実だ。
 ここでこんなカミングアウトをするのもどうかとは思うが、仁王は丸井が好きなのだ。正しくいえば、丸井の足と胸が。
 流石に胸を見ていたら変態のレッテルをはられてしまうから足を見ていた。
 ほどよく引き締まった太股、流れるようなライン。丸井の足は他と群を抜いて綺麗だ。昔から足フェチのきらいのある仁王は綺麗な足を見ると無意識の内に見つめてしまう癖があるのだ。

「しょ―じきにはいてもらお―か仁王くん」

 もう逃がさないぞ、と丸井の瞳が物語っている。

「だから…その……」
「ん?なに?」

 丸井の足が好きなんじゃ、となかば語尾を掠れさせながらにいうと丸井がぱちぱちと目を瞬かせた。

「……え、足?」
「そう、足」

 パンツじゃないき、と少し強調すれば丸井がんじゃあ、とスカートの裾を持ち、そのままめくりあげた。
 ただでさえ短いスカートをめくればパンツが見えるのは当然のことで。

「なっなにしよるんじゃ丸井……っ!?」
「足、見たいんだろぃ?」


 そういう問題じゃ、と言おうとしたところで丸井の手が仁王の手を掴み足に触れたところで理性が音をたてて崩れ去った。





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2012/6/8
御題は自惚れてんじゃねぇよ様より


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