■ 儚く震える角膜をきみは知らない

 素直に好きとはいえない。

 それは自分の性格だとか今の状況とか関係性とか様々な要因は馬鹿みたいにあるけれどやはり意気地のなさがいちばんの原因だ。

「あのねぇブン太。あいつは絶対言わないとわかんないからさ、他の女にとられる前にはやく告っちゃいなって」
「そんなこと言ったって無理なもんは無理だし、幸村くんと違ってそんな意気地ないし」

 幸村は呆れたように溜め息を吐いて、ブン太の頭をぐしゃりと撫でた。

「ブン太がうじうじしてる間に、俺がとってやろっか?」
「え…っ!?」
「う―そ、」
「…ッ……びっくりさせんな!」

 やっぱブン太は可愛いからきっと上手くいくって、と幸村が言うがやはりブン太は踏み切れない。

「好きだけど、俺自信ない……」
「ばーか。ブン太それ本気で言ってんの?」
「……ど―ゆ―こと」

 幸村はここまでいってもわからないのか、とさらにわざとらしく溜め息吐いてブン太の額に思い切りデコピンをかました。

「だ―か―ら!ジャッカルはブン太のことが好きなんだって!」
「なんでそんなことわかるんだよ」
「むしろわからないブン太がわからないよ俺は」

 あんなにわかりやすいのに、何故わからない、と。



 何度目になるのかもわからない溜め息をすり抜けて、ブン太はジャッカルの元へと走っていく。



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心持ち♀のつもりで書きましたが男のまんまでも違和感ないので注意書きはしませんでした。


2012/5/24
御題は幸福様より

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