■ 甘い唇に溺死

 ふいに近付けられた柳の顔が微笑んで、仁王の額に小さくキスを降らせた。

「なん、急に」

 不可解な柳の行動に困惑気味の仁王が視線を送れば、今度は唇に唇が触れた。

 野郎の唇なんて何の魅力があるのだろう、と疑問を抱いていた時期もあったが実際柳の唇は見た目とは裏腹、驚くほどに柔らかい。まるで女のそれだ。
 割と恋愛経験は豊富である仁王は何人もの女生徒とキスなりセックスなり散々していたが柳の唇をこえる奴は未だにいない。

 まだお遊びで付き合っていた頃は時折浮気を重ねてクラスメイトをとっかえひっかえしていたのだが、柳に溺れ始めてからというものただただ柳から離れられなくなっていった。
 もはや中毒ともいえる頻度でキスに飽きたらずセックスまでして、抑えきれない情欲を吐き出す毎日。
 最終的に足りなくなる時は一人で抜いたりもして。


 それほどまでに、仁王は柳に溺れている。






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2012/6/7

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