■ そろそろ気づいて

 部室に来た瞬間に感じた違和感。

 何かがおかしい。具体的に何なのかはまったくわからないけれど、何か今とんでもないことが起こっているような気がする。
 人より本能的勘は優れている。その勘が不幸にも今不穏な空気をひしひしと感じ取っているのだ。
 さらにその勘は見事にあたってしまったようで、とうとう仁王は目にしてしまった。

「な…ッ…おまえさん一体なにしちょるんじゃ……っ!!」

 ぽたりぽたりと滴る血溜まりの向こう。床に臥した真田と、その横で血塗れのナイフを片手に持った――……



 そうして。じわりと脇腹に滲む赤と、一瞬あとに襲い掛かる激痛。

「…っ…く、……」

 霞のかかる目前の光景。遠退いていく意識を離すまいと手をのばすがそれも叶わず、再び浮上するかもわからない意識が暗闇に包まれた。



* * *



 幸村精市は殺人の容疑で神奈川県警に送検された。
 同じ部活に所属するチームメイト二人を殺害した容疑で、現行犯で取り押さえられたのだ。








「……っていうシナリオ、どうかな?」


 目の前で息も絶え絶えに悶える仁王を見下ろしながら、返り血を浴びた幸村は幸せそうに笑った。





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2012/6/5
御題は確かに恋だった様より

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