■ 檻の中の遊戯

 一体今は何時なのだろう。

 くらくらする意識の隅でふと、仁王は思った。

 照明の落とされた室内は薄暗く、四肢に繋がれた手足足枷のおかげでろくに動くこともままならない。大声が出せないように口には猿轡までかまされて、状況がまるでわからない。ただわかることといえば多分今仁王は今“監禁”されている、ということぐらいだった。

 目を覚ましてからどれだけの時間が経った頃だったろうか、背後からコンコン、とドアをノックする音が響いて仁王は反射的に体を強張らせた。

「おや、目を覚ましたようだな」

 おそるおそる視線を声の方に向ければにこにこと笑みを崩さない柳がそこにいた。
 言いたいことは山ほどあるのに、猿轡のせいで上手く言葉にならない。

「まあそう焦るな。猿轡ぐらいは外してやる」

 ようやく口を解放されて、仁王は口の中にたまった唾液をごくりと飲み込んだ。

「い、一体どういうつもりじゃ参謀…っ!」
「……どういうつもり、とは?」

 どこに不満があるのだ、と言いたげな瞳を思い切り睨み付けて仁王はぎり、と歯を食いしばった。

「例えば、飼い慣らしたい鳥がいたとするだろう?」

 柳は仁王の顎に手をのばし、するりと輪郭にそって頬をなであげた。

「躾るときに、俺はその鳥が逃げないよう檻に閉じ込めなければいけない」
「何が言いたいのか、まったくわからんき」
「つまりだ。おまえはその鳥だ、仁王」
「……は…?」
「安心しろ、躾が終われば解放してやる。俺なしでは生きられない体になるまで」

 仁王はごくりと生唾を飲み込んで、何とかして後ずさろうとするが枷のせいでそれは叶わない。


「こわがらなくていい、……優しくしてやる」



 その時の柳の目は明らかに獣のそれだった。

(檻の中にあなたを閉じ込め、私は漸く安心する)


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2012/6/4
柳×仁王

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