■ 少しずつ少しずつ、

 ソファに折り重なった二つの影。
 浅く吐き出された息が柳の首筋を擽る。

「…や…っ…さんぼ、はよ、抱いて…っ」

 熱に浮いた思考を制御しようと足掻く仁王の姿は酷く妖艶で、柳の意識の奥深くまでを酔わせていく。

「駄目だ。今日はやらないという約束だったろう?」
「やじゃっ……」
「こら、我が儘を言うな」

 柳を脱がしにかかる仁王の手を制止しながら柳の指が仁王の腰をなで上げる。

「はしたないな……もう此処をこんなにして…」
「ゃ、いわ……んで、」

 涙目で柳にすがりつく仁王の手は僅かに震えていて、柳はその手ごと包み込む。

「ならば自分でするか?」

 ぶんぶんと首を横にふる仁王の両の頬を両手で挟んで、柳は微笑む。

「では、キスぐらいならしてやろう」
「ほんに?」

 そのまま柳の方にぐい、と引き寄せられて、唇が深く合わさる。
 絡められた舌が熱くて、脳髄までどろどろに溶けてしまいそうだ。

「ん…んっ、ふぁ…ッゃなぎっ!やな、ぎ、すき、好きじゃ…っ」

 柳の上で乱れる仁王は何度も柳の名前を呼んで、もう理性は擦り切れてなくなっているようだった。


「俺も…おまえが好きだよ、仁王」


 好き、好き、好きが溢れて。


――ぐちゃぐちゃに壊してやりたくなる。

(少しずつ少しずつ、
そして緩やかに私は罪を重ねた)



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2012/6/3
柳×仁王

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