■ ひとりじめ

 ちりん、と軽快に鈴の音が鳴る。



 柳からキーホルダーを貰った。
 雑貨店に行った際に購入したというそれは猫を象ったもので、猫の横に小さな鈴がついており歩く度にちりん、ちりんと澄み切った音を奏でる。
 尻ポケットに突っ込んだ財布からのびるチェーンにつけたキーホルダーは仁王の密かなお気に入りになり、鈴が鳴る度に上機嫌に口笛をふいてみせたりするのだった。



「柳が人に何かあげるなんてめずらしいね」
「ああ、仁王のあれか」
「うん。なんか仁王はすっかり気に入ってるみたいだけど……」

 何か裏があるんでしょ?、と幸村が笑う。
 やはり精市にはかなわないな、と柳も笑った。

「俺が推測するにさ、あれはいわゆる“首輪”ってことでいいんだよね?」
「流石。ご名答、」


 そう、柳は仁王を己の所有物だと改めて示すために首輪をつけた。柳の手から逃げ出してしまわないように。
 鈴が鳴る度に仁王は無意識の内に柳を思い出す。あの鈴が柳そのものなのだ。

「どうせ仁王にこの鈴を俺だと思え―みたいなことも言ったんでしょ?」

 柳は意味深な笑みをたたえて、幸村を見た。

「……おや、猫が帰ってきたようだ」


ちりん、ちりん



――はやく飼い主の元へ堕ちておいで。





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2012/6/3
御題は雲の空耳と独り言+α様より

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