■ 恋と砂糖とカラメル

※仁王と日吉が乙女趣味


 地元だと知り合いに会う可能性があるから、わざわざ東京まで足をのばして服を買いに来た。
 お気に入りのピンクのプリーツにひらひらの真っ白なブラウス。帽子にサングラスをかけて、軽い足取りで駅に向かう。
 二回ほど乗り継いで、やっと東京駅についた。駅の中は人でごった返していて思わず面食らう。
 お目当ての店はここから歩いて五分ほどのところにあるらしい。方向感覚は人並みにあるので、近くにあった地図を見て現在地を確認した後仁王はさっさと歩き出す。
 あっと言う間に目的地について、仁王は鼻歌混じりに店に足を踏み入れた。
 仁王は女性客にに混ざって新作の服を見て回っている内に店の奥の方にいる女の子に目がとまった。

(すっごいかわいいコじゃ……)

 青を基調としたワンピースには白のレースがあしらわれていて、頭にはワンピースと同じ色のリボンのカチューシャがつけられている。
 さらさらの薄茶の髪が揺れる度に仁王の視線はどうしてもその子の方に向く。
 声をかけたくてたまらないが、男とバレてしまうのは正直嫌だから見るだけにとどまる。
 ただ見つめることしかできないけれど、その女の子はすっかり仁王の心を奪ってしまった。

 と、女の子がくるりとこちらを向いた。さらに視線がかち合う。

――て、あれ?

 どこからどう見ても、彼女は氷帝の日吉に見える。
 見間違いかと思って目を擦るが、見れば見るほどに日吉にしか見えない。

「…日吉…じゃよな…?」
「に、仁王さんですよね…?」

 お互い絶賛女装中で、たまたまお店でばったり会ってしまったわけで。

「……え、」

 目を離せないままに見つめ合って、仁王はあまりの衝撃的な展開に息をのんだ。



* * *


 混乱しつつもなんやかんやで日吉の家にお邪魔することになって、ぎこちなさが目立つ中なんとか日吉宅にたどり着いた。

「なんちゅ―か、ほんに日吉かわええ」
「ほ、褒めてもなにもでませんよ!」

 日吉の部屋は仁王とは違ってかなり質素で、必要最低限のものしか置いていない。

「その……仁王さんもそういう趣味なんですか…?」
「そうでなかったらこんなカッコせんよ」
「ですよね……」

 それっきり黙りこくってしまう日吉に仁王はにっと微笑んで頭を撫でてやった。

「あんな、日吉。俺こんな趣味気持ち悪い思われるとおもうて誰にも秘密にしちょったんじゃ。けど日吉も同じ趣味もっとって俺めっちゃ今嬉しいき、今度二人でどっかでかけん?女の子のカッコして」
「……はい…っ」

 ほんの少し頬を染めた日吉は本当に可愛くて、仁王は思わず日吉を抱き締めた。


女の子になりきるのは楽しい。
ふわふわできらきらは好き。
ひとりよりふたりの方が楽しい。

だって、気持ちは女の子だから。



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2012/5/27
御題はHENCE様より

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