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週末に事件は起こった。
通販で購入した新作のワンピースが届いたので早速部屋で試着していた丁度その時だ。
階下から母親に呼ばれ、仁王はワンピースのまま階段をかけ降りた。(家族内で仁王の女装趣味については容認されており姉に至ってはあれこれ買ってきては着せてきたりする)
また雑用でも頼まれるのかとリビングに顔を出せば、そこにいるはずのない人物と目がぱちりと合った。
「……仁王?」
「や…ゃ、や……な、やなぎ……ッ!!?」
リビングのドアを思い切りしめて、仁王は今起こっている事象について必死に頭の中で整理する。
「なんで柳がうちにいるんじゃ…っ!」
ドアの向こう側で柳と母が何やら会話をするのが聞こえて、しばらくした後ゆっくりとドアが開いた。
「週明けに提出の課題を忘れて帰ってしまったようだったから届けにきたんだ」
「……ちょっと待っとって、すぐ着替えるき」
「別に構わない……その、似合っているから……そのままでいてくれないか」
「ムリじゃ…っ!ただでさえ恥ずかしくて死にそうじゃき、堪忍して柳…ッ…」
「とにかく部屋に案内してくれないか?」
「――…ッ…部屋、も」
「駄目なのか?」
「……ひかんでくれるて、約束してくれるんなら……いい」
「ああ、約束しよう」
無言で階段を上り、一番奥の一室へと案内する。
扉を開ける前にほんの一瞬柳の方を見るが、すぐにそらしてしまった。
「散らかっとるけど…」
「構わない」
どこからどう見ても中学生男子とは思えない部屋に、柳が足を踏み入れる。
柳は部屋をぐるりと見回すと、視線を仁王に移した後に羞恥に顔を真っ赤にする仁王にそっと口付けた。
「……やなぎ?」
「可愛い」
「へ?」
「あまりに可愛いから今は理性が持ちそうにないんだ…責任をとれ」
そのままベッドに押し倒されて、さらに深い口付けをされて。
「俺……女の子みたいなカッコして、その…気持ち悪いとか思わんの?」
「人の趣味なんてそれぞれ違っていて当然であるし…今の仁王は普通の女性より何倍も可愛いからそんなことは気にならない」
ワンピースの裾から太股をなぞられて、びく、と体が震える。
「俺以外にそんな可愛い姿を見せてくれるなよ……襲われてからでは遅いからな」
もはや羞恥心もなくなって、仁王ははにかみながら柳にもう一度キスをねだった。
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2012/5/17
御題は誰花様より
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