■ 悲鳴は聞こえていました

※自傷描写があります


手首を滴り落ちていく透明の赤い粒が酷く綺麗だ。
もはやその痛みさえも快感で、何故か頬を伝っていく涙を拭いながら声を立てて笑った。

「……リストカットか、仁王」
「俺のカラダをどうしようが俺の勝手じゃろ?」
「別に咎めるわけではないが……それはそんなによいものなのか?俺には少々理解しかねるのでな」

わざとらしく眉をしかめてみせる柳の口元には薄く笑みが浮かべられていた。

「一回やってみんしゃい、全部忘れられるき」
「申し訳ないが俺は遠慮させていただくよ。痛いのは余り好まない質なんだ」
「……そ。まぁ、やっぱ参謀はそう言うと思っとった」

仁王は生まれたばかりの傷口に唇を押し当てて、滲み出す血をちろりと舐める。
口端に微かに血がついた。

「偽善者の様な真似はできないが、もっと別の方法で楽になるやり方を教えてやろう」
「ん?なんじゃ?」

柳は仁王の手をとって、固まりかけた血を執拗に舐めて吸い上げる。

「俺に抱かれろ」

仁王は一瞬だけ驚いた表情を見せたがすぐにええよ、と返事をして、とても嬉しそうに笑んだ。

「きもちええなら、もうなんでもいいき」





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2012/5/7
御題はポケットに拳銃様より

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