■ 砂糖はいという間違った認識

 屋上で昼寝をしていた最中だ。ぽかぽかとあたたかい陽気が降り注ぐ中、このまま午後の授業はさぼってしまおうと心に決めたまさにその時だった。

「雅治」

 びくん、と面白いぐらいに体がはねて、仁王は驚きのあまり飛び起きる。
「や、やな……っ!?」
「授業も受けずに昼寝とは…そんなことばかりしているとじきに痛い目にあうぞ?」
 参考書を片手に柳がくつくつと笑いながら言う。きっと仁王の反応を見て喜んでいるのだろう。
「成績は良いき、心配はいらん」
「世の中には平常点なるものが存在するということをおまえは今一度認識した方がいい」
 柳は呆れたように溜め息を吐き出し、ちらりと時計をみやった。
「…と言いつつも次の授業が始まるまであと一分をきってしまったな」
「柳も人んこと言えんくなるんじゃなか?」
「まあ……たまにはいいだろう」
「人に散々説教しよったくせに」
 仁王がふい、と顔をそらせば柳が急に黙り込んでしまい、僅かばかりの不安にかられ肩越しに振り返ろうとした、その時だった。
 まさはる、と耳元で再び柳が仁王の名前を呟き、あろうことか耳朶をはんできた。
「ひ…ぁ…ッ!」
「やはり仁王は耳が弱いんだな、……いいデータがとれた」
「そんなことな…っ…ゃんッ!」
「顔を真っ赤にして否定しても説得力の欠片もないぞ?」
 執拗に耳をいじってくる柳に焦れったくなって、仁王は両手を柳の胸に押し当てて抵抗の意を示す。
「耳は、いやじゃ」
「体は喜んでいるようだが?」
「う、うっさい!参謀がえろい声出すんが悪いんじゃ!!」
「……こんな風にか?」
「…ッ…!?」
 耳まで真っ赤にした仁王は耐えきれないといった風に柳にしがみつき、顔を俯かせた。
「……参謀の意地悪ッ」
「おまえが可愛い反応ばかりするから、つい虐めてやりたくなるんだ」

 柳はそういうなり仁王を押し倒し、唇を奪っていった。



end.
2012/5/7
2013/3/14 加筆修正
御題:カカリア




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