■ ヤバイ、意地悪したいかも

例えば、息ができないくらい執拗にキスをするとしたら。

跡部はそれが気に食わないらしく、ある一定の度合いを超えると有無も言わせずして思い切り噛んでくる。それは舌が千切れんばかりに容赦なく。
血が出るなんてしょっちゅうだし、その度に痛い思いをするのは忍足自身なのだが苦しげに眉間に皺を寄せる跡部が見たいばっかりについつい意地悪をしてしまう。

個人的にキスのテクニックにおいて自分の右に出る者はいないと自負している。それだけの経験を重ねてきた(跡部には内緒だけれど)自覚は十分すぎるほどにある。
中学に入ったばかりの頃はそこらへんの女の子をとっかえひっかえしまくっていたから付き合った分だけキスやらなんやら、思春期男子にはたまらない状況だった。
女の子はどこを触っても柔らかいし、良い匂いがするし、興奮を誘う要素はどこまでも尽きない。

しかしそんな経験を経て今現在跡部とまぁいわゆる“そういうカンケイ”になっているのはある意味で不自然極まりない。ちなみにいうと跡部に惹かれたのは忍足が先であるし、告白から何まですべて忍足からしかけたものだ。

女の子にないものというか、多分跡部しか持ち合わせていないナニカに強く惹かれたんだと、忍足は勝手に自己完結をしている。
癖になる弾力をもった唇がキスを強請ってくる度に、どこまでもどろどろに溶かしてやりたくなる。
女遊び(をしていたつもりではなかったのだが)をやめてからは跡部が以外とキスもセックスもしていない。
跡部は別に浮気のひとつやふたつは構わないと口では言っていたがきっといざやれば殺されるのは必然なのでやらない。
別に跡部がいればそれだけで十分で、不思議と浮気衝動にかられることはない。(以前は日常的に浮気衝動にかられていた)
最終的な結論を述べれば要は跡部に夢中過ぎて他に目もくれる余裕もない、ということで。

「な―に俺以外のこと考えてんだよ」
「あ―、バレた?」
「忍足のくせに生意気だ」
「景ちゃんだってたまに上の空なことあるやんか」
「俺はいいんだよ」
「そんなとこでジャイアニズム行使せんといてや……」


悪戯より何より、触れるだけで気持ちはいっぱいになって忍足の脳内は桃色に染まっていく。



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2012/5/14
御題はポケットに拳銃様より


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