■ 遊びのつもりでくちづけた

綺麗な奴、最初はただそれだけの感想しか抱けなかった。もう少ししてからやたらとプライドが高い、ということもわかってほんの少し跡部への関心が高まった。

「なぁ、跡部は彼女とかおんの?」
「おまえと一緒にすんじゃねぇよ忍足。俺様はそこらへんに転がってる女と戯れてる暇なんてこれっぽっちもないんだよ」
「その言い方なんか俺が女ったらしみたいやんか―」
「あながち間違ってねぇだろ?」
「まぁそやけど……」

あっさりと認めてしまうあたりが駄目なのはわかっているのだが、やはり特定の一人と関係をもつということは忍足にとって至難のわざなのだ。
色々な子をとっかえひっかえしているのは純粋に一人だとつまらないからで。性格こそ違えど女の本質は皆一様で、新鮮味も面白みも何もない。
新たな刺激を求めて乗り換えども結果はいつも同じなので、忍足自身それ自体に飽きてきている。
やはり恋愛は一概に上手くいかないものなのだと、改めて実感している真っ最中なのだが。

「じゃあ跡部は一回も付き合ったことないんや?」
「わるいか」
「じゃあ跡部、俺と付き合ってくれへん?」

「……は?」

跡部が唖然とした顔で忍足を見つめる。

「おまえ頭おかしくなったんじゃねぇの」
「冗談やないで?俺はいつでも本気やから」

そう言うなり忍足は跡部の顎を掴み、こちらに向かせると躊躇いもなく口付けた。


「な、ええやろ?」





(跡部やったら俺の退屈まぎらわせてくれるやろ?)


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2012/5/10
御題はポケットに拳銃様より

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