■ 後ろめたさとはちみつの甘さ

まるでそれが必然であったとばかりに口付けられた唇は酷く甘かった。
抵抗もままならない間に舌を引きずり出され、咥内を蹂躙される。あまりに突然の事態に頭が追い付かないが、ただ目の前にいる仁王のキスが気持ちいいということだけは痛いほどわかった。
キスに関して言えば忍足はかなり巧い部類に入るだろう。しかし仁王も負けじとそれに匹敵するぐらい巧い。思わず思考がもって行かれそうになるほどに揺れる理性を翻弄してくるのだ。
経験上、キスが巧いイコール女遊びが激しい、という認識なのだが、今はそのことを咎める余裕さえもなかった。

「逃げんで跡部、じっとしとって」

ぺろりと下唇を舐められて、ぞわりと背中が粟立つ。逆らおうと思えば、抵抗しようと思えば簡単にどうにでも出来る状況だというのに体はぴくりとも動かない。恐怖?否、期待しているのだ。この先を。

「……イイ子、」

仁王が妖艶な笑みを浮かべて、跡部の頬を撫でる。その指先の冷たさにぎゅう、と目を瞑った。

「痛いことはせんよ、ちょっとばかし悪戯するだけやき」
「……悪戯?」
「そ、忍足がどんな顔するんか見てみとうてな」

そう言って仁王は跡部の首筋に吸い付いた。
仁王の唇が離され、首筋を見ればくっきりとキスマークがついていて跡部は一瞬言葉を詰まらせた。

「よう見えるとこにつけといたき、隠してもムダじゃよ」

仁王はにい、と笑みを深めてもう一度跡部に口付けた。





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2012/5/9
御題はポケットに拳銃様より

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