■ おいで、愛してあげる

跡部が拗ね始めてはや一時間が経過した。

ちなみに言うと拗ねている理由はまったくといっていいほどさっぱりわからない。勿論心当たりも皆無だ。

「どうしたん景ちゃん。らしくないで?」
「うっさい。ほっとけ」

放っておこうにもここは忍足の部屋であるし、跡部はベッドにうつ伏せて動かないままで。

「あんま無茶ぶりせんといてぇな、流石の俺でもどうしようもできへんし……」
「いいから構うな」

ほとほと困り果てた忍足はしょうがないので近くに置いてあった読みかけの文庫本を手にして読書を始める、が跡部が気になってすぐにやめてしまった。

「ずっとこのまま言うんやったらしまいには襲ってまうで?」
「……勝手にしろ」

余りにそっけなさすぎる跡部にだんだん腹がたってきて、忍足はうつ伏せの跡部の体をひっくり返して唇を奪った。

「かまってほしいんならちゃんといいや」
「気付かねぇおまえが悪い」


こんな横暴や我が儘を許容してしまうあたり、完全に毒されている。
自覚しても甘やかしてしまうのは愛故なのだ。





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2012/05/03
御題は誰花様より

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