■ そんなキスじゃ伝わらない

 甘い雰囲気もへったくれもない。

 気が付いたら机に積まれていた教科書やノートが足元に散らばって、次の瞬間には唇を塞がれていた。
 跡部はそれがなんだか気に食わなくて、忍足の舌を思い切り噛む。

「いった……ぁッ」
「おまえのキスはいちいちねちっこいんだよ馬鹿」
「あ―バレた?」
「……てめぇあれ、わざとだったのか」
「キスいうかて結構バリエーションあるからなぁ……景ちゃんはねちっこいのより甘い方が好き?」
「それぐらい恋人ならわかるんじゃねぇの?」
「景ちゃんは意地悪やなぁ―」

 子供みたく忍足が頬を膨らませても可愛げなんて欠片もない。

「じゃあ、色々ためしてみよか」

 そう言って忍足は跡部を引き寄せるとまずは優しく壊れモノを扱うようなキスをして跡部の様子をうかがった。跡部が気に食わない、という顔をしたので今度は路線を変えて徐々に激しくする。
 息継ぎをする暇も与えないぐらいに口内を至る所まで舐め尽くして再度跡部の機嫌をチェック。これはなかなか。
 今度は焦らして、舌先から食べるみたい吸い上げる。

「ばっ……やめっ…」
「え、なに?よかった?」
「……ッ…!」
「そういうトコ、ほんまわかりやすいよなぁ」

 逃げる跡部を無理矢理つかまえて、焦らす。

「……―っ、ん、んん…っ」
「かわえぇ景ちゃん…っ…」
「ばっ……調子のんな…あほ!!」
「そんなケチケチせんといてや景ちゃ―ん」



 それからというもの味を占めた忍足がキスを強請る度に跡部が嫌な顔をするようになったのは言うまでもない。





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2012/4/6
御題はポケットに拳銃様より







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