■ いいから好きだって言わせて
つくづく絆されいると思う。マシュマロみたいなふんわりとした笑顔に流されて、大抵のことを許してしまう癖をいい加減に直さなければいけないと思い始めて早数ヶ月。
手を繋ぐのもキスをするのも全部長太郎に強請られてやったことだし、それに対して大した抵抗ができなかったのは確かだ。否、というよりも同性とはいえ恋人同士なのだからそんなことをして当たり前だともいえるのか。
「どうしたんですか宍戸さん?眉間の皺、すごいことになってますけど」
「えっ?あ、あぁ」
はっと我に返れば心配そうな顔をした長太郎が宍戸をのぞき込んでいた。
「ごめん長太郎、俺、ぼーっとしてて……」
「えっ!?た、体調が優れないとかですか…ッ?」
「べ、別にそんなんじゃね―から!」
「ならいいんですけど……」
尚も顔を曇らせる長太郎の髪をくしゃりとなで上げて、宍戸はにっと笑ってみせる。長太郎は宍戸より背が高いので頭を撫でるのにもひと苦労だ。
「心配してくれて、サンキュ」
「……宍戸さんはすぐに無理するから…俺、心配なんですよ?」
ふいに抱き締められて長太郎が切なげな視線を送ってくるから最後には何もいえなくなって、お詫びじゃないけれど力強く抱き締め返した。
いいから好きだって言わせて
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2012/4/6
御題は魔女のおはなし様より
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