■ もしかしてドキドキしてる?

 部屋に二人きり、なんて美味しいシチュエーションの中跡部は黙々とペンを走らせていた。
「まさかとは思うけど、今から練習メニュー組むとか言わへんよな?」
「今やらねぇでいつやるんだよ。生徒会の書類も溜まってるし……」
 次から次へと沸いてくる仕事の山に跡部が追われているのもわかるが恋人を部屋に呼んでおきながら放置、というのは流石に酷いのではないか。まあそんなことを思ったところで言い出せるはずもないのだが。
「俺になんか手伝えることある?」
「じゃあこれに判子押していってくれ、ほら、ここ」
 ざっと二百枚はあるであろう書類を目の前に積まれて忍足は慌てて崩れないように書類の山を上から押さえつける。
「すべて目は通してあるやつだからあとは印を押すだけだ」

 黙々と判子をぺったんぺったんと押していけば思いの外書類ははやく片付いてしまった。
「景ちゃんおわったで―」
「奇遇だな、俺も今終わったところだ」  ぐい、とのびをする跡部の顔はどこか幼くて、横から見ていて酷く微笑ましい。
「なぁ景ちゃん景ちゃん、ちょっとこっちおいで」
 素直に側に寄ってきた跡部の額に忍足は軽くキスを降らす。
 離しざまにがんばったご褒美やで、と囁くと顔を真っ赤にしてそっぽをむかれてしまった。
「これぐらい、いつもやってることだ。褒められるほどのもんじゃねぇよ」
「たまにはご褒美もええやろ」
「べ、別に嬉しくねぇからな!」

 頬の紅潮は消えず、帯びた熱は忍足のてのひらに伝わる。





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2012/3/29
御題はポケットに拳銃様より

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