■ 君の視線を独り占めする方法

 万物を吸い込んでしまえそうな澄み切った瞳が、レンズ越しにこちらを見つめてくる。

「どうしたん景ちゃん、もしかしてちゅーして欲しいんか?」
 冗談混じりに忍足がそう言えば、一言馬鹿じゃねぇの、と返されてしまう。予想していた返答ではあったが、同時に心底嫌そうな顔をされたので少々傷付いた。
「で、なんや?」
 もう一度跡部を見つめ直せば、意外にも唇を重ねられた。つまりは今、跡部は忍足に甘えたいのだ。あくまで推測だが、大してハズレてはいないと思った。

「おいで景吾、」

 両腕を伸ばせば、跡部は思いの外素直に忍足の腕の中におさまった。
「……ン、」
 頬がぴたりと胸にあてられて、正直気が気ではない。伏せられた瞼からのびる睫があまりにも綺麗で、忍足は思わず唾を飲み込む。
「少しだけ、寝る」
 それだけ言って跡部は本格的に眠る体勢に入る。目と手のやり場に困った忍足はとりあえず頭をゆっくりと撫でておいた。

「あったけぇな、おまえ」

 密着する体と体。少しずつくすぶっていく劣情を押し殺すように、忍足は小さく咳払いをこぼす。

「景ちゃんはほんまえげつないことするわぁ……」

 無防備な恋人を目の前にして、忍足に為す術などあるはずがなかった。





(起きたときにみえるのは俺の顔だけや)


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2012/3/15
御題はポケットに拳銃様より

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